砂原茂一「『きく』か『きかない』かをきめること」『転換期の結核治療―「変わるもの」と「変わらないもの」』(東京:南山堂、1958), 1-33.
重要文献に出会う。対象は結核だが、厚生省と開業医が何を処方するかをめぐって対立した事例を解説し、それを通じて何を処方して治療で用いるかをめぐる基準が考察されたことを示している。来年度からの大学院の医学史の授業でリーディング・マテリアルとして使う。
昭和26年の3月に、結核治療指針が示される。健康保険の3割が結核治療費で占められていること、しかもその7割が「医学的に価値が少ない」療法である消炎鎮静剤、ザルブロ、カルシウムに用いられている事実をうけて、厚生省が指針を与える。この指針を関東各地の医師会で講演した時に、医師会は指針を激しく攻撃し、対症療法を全面的に排撃し、虚脱療法を推進しようとしていると批判した。砂原は、カルシウムは「無害・無益」であり、人工気胸、外科療法、TB1[これはなんだろう]は「有益・有害」であるといった。それからわずか数年、対症療法についてのいざこざは昔語りになる一方で、保険経済は、化学療法、外科療法のために飛躍的な赤字となった。ストレプトマイシン、PAS、ヒドラジドなどは、アメリカやヨーロッパでは大規模共同研究によって効果が明らかにされた。このような治療の研究体制が日本では存在しない。
結核では再発が多く、東京療養所では53.5%、東大内科では41.4%が再発である。結核は再発して再治療が必要になる慢性疾患である。
>なんて精神病に似ているんだろう。