江戸時代の医師と階級制度について。士農工商の士と農工商の経界を跳び越すことができた数少ない職業の一つの医者であった。実際には医者はサービスや薬を提供して、それに対して報酬を得るサービス業・小売業であったが、商人とは異なるという強い意識を持っていた。浅田宗伯にお薬代はいくらかと尋ねたところ、玄関番が医者は商売ではないと𠮟りつけたというエピソードが残っている。それを語る水戸藩の侍医になった人物の長い論説が掲載され、医者は帯刀するべきであると主張している。
三田村鳶魚は江戸時代の医者を非常に贔屓にしている。近代医学のもと、医学が成長してステータスを上昇させていた時期だからだろう。またこれは『医文学』という、基本的には医者を対象として雑誌であったため、読者の顔色を窺った部分もあるのかもしれない。