19世紀イングランドの家事本における病人用の調理法

Webster, Thomas and 靖夫 植松. An Encyclopædia of Domestic Economy. Athena Press, 2005.  Originally 1844.
Nightingale, Florence. Notes on Nursing : What It Is, and What It Is Not. Dover Publications, 1969. Originally 1860.
Beeton, Mrs. The Book of Household Management : Comprising Information for The ... Also, Sanitary, Medical,  & Legal Memoranda; with a History of the Origin, Properties, and Uses of All Things Connected with  Home Life and Comfort. [Facsimile edition] edition, Cassell, 2000.  Originally 1861.
 
イギリスの女性向けの家事本を読むと、家族の病人とどう対応するかという議論があり、病人向けの食事の調理法と薬の利用の仕方が記されている。17世紀・18世紀には調理と養生と薬が混然一体となっていたが、19世紀には食事の調理法についてだけ書かれる傾向がある。これは後から調べる。三つほどの原書を読んでみた。
 
薬の歴史も苦手領域の一つだが、食物や調理法の歴史ということも、私が苦手にしている領域である。出てくる基本的な語が分かっていない。例えばcaudel という単語は、女性が出産の周辺で飲食するパンなどを煮たおかゆのようなものであることを久しぶりに思い出した。中国の緑茶の銘柄 hyson などは、初めて見たのではないかと思う。テクニカルな単語が多いので、わかるようになるのに少し時間がかかる。
 
19世紀の半ばの議論を読むと、まずナイチンゲールの影響は鮮明である。1860年に刊行したナイチンゲールの看護覚書が、翌年の1861年に刊行されたビートンの家事指南書では何度も重要な影響を受けたと論じている。もう一つ前のビートンを手に入れて較べてみてみよう。ただ、ナイチンゲールが突然影響を及ぼしたわけでもないことも明確である。1844年の 家政百科事典だと、これまで当たり前に行われてきたことが、近年の医師の指導によって人々が行わなくなってきたと記している。医師による食事の指導という規模が少し大きい流れになっているのかもしれない。
 
アイテムとしては、tea と呼ばれている肉のスープ、中身は牛、子牛、チキンなどである。香料やミントを使ってもよい。中国の hyson という緑茶もいい。卵を茶やコーヒーの中でゆっくり温めてもいいし、温かいミルクの中で加熱してもいい。パニャーダやブラマンジュというどろっとする煮たパンやお米などもいい。