Green, Monica H. "Putting Africa on the Black Death Map: Narratives from Genetics and History ." Afriques, vol. 9, 2018,
モニカ・グリーン先生がアフリカのペストに関して非常に大きな議論を展開している。彼女がこれまで発表した論文も読んでいて、確かに非常に大きな議論だと思う。これを受け入れると、医学史のいくつかの領域が、人文社会の領域ではなくて、遺伝学やDNA研究の一つになるだろう。
グリーン先生の議論は、黒死病 The Black Death と呼ばれている中世から初期近代までのペストの大流行の地理的な範囲である。ヨーロッパはOK. エジプトとマグレブもほぼ同じ時期でまったくOK. 黒死病の範囲というと、地中海世界を囲んだ範囲と、ヨーロッパの範囲になる。よく見る地図がそれを表示している。
重要な問いは、アフリカ南部はどうだったのか、サハラ以南のアフリカはどうだったのかという問いである。人文社会系の研究者は、史料がないからわからないと答える。DNAの分析などができる研究者は、現在のDNAの状態から、その歴史を再構成することができると言う。グリーン先生は後者の議論を積極的に推進している人文社会科学出身の研究者である。
グリーン先生の膨大な議論によると、アフリカ南部でも、この時期、あるいは少し遅い時期に激しいペスト流行があったという議論がある。栄えていた文明や都市が放棄されたという議論もある。DNAの変形もこの議論を支えているという議論がある。コンゴ、ウガンダ、ケニア、ザンビアなどの地域における黒死病という議論である。
グリーン先生よりは熱心さは欠けるかもしれないが、多くの人文社会科学系医学史研究者はこのタイプの議論の強さを知っている。もちろん、文明が一度滅んだという議論が時々持つ弱さも知っている。しかし、私の印象を言うと、色々な脈絡で、グリーン先生たちの議論が強いと思う。数年後にペストを授業で話すときには、グリーン先生が引用している議論を理解して、アフリカについての講義を一回だけ作ってみよう。DNAの議論ができるかどうか理解するために、どなたかとご相談して、医学部でその科目を学ばせてもらおう。