Duncan, David Ewing. 暦をつくった人々: 人類は正確な一年をどう決めてきたか. 松浦俊輔訳. 河出書房新社, 1998.
「知識は無知を知らしめる」とでも言うのか、初心者として日本の旧暦の勉強を始めると、色々な無知がどんどん明らかになってきた。岡田芳朗『アジアの暦』を読み、中国の暦の二十四節気・七十二候が分かるようにしよう考えていると、色々なことを知らないことを痛感する。
今回のデイヴィッド・E・ダンカン『暦をつくった人々』も話は似ている。西洋の暦のシステムならば知っていると思ってきたことも大錯覚である。少し読んだだけで、知識が急速に増えるが、それと同時に自分の無知を痛感させる。
話の中心は16世紀末の「グレゴリオ暦」の採用である。その前は「ユリウス暦」であった。導入されたのは45年BCEで、ここでは一年間を365.25日と考え、4年に一回閏年を導入するものである。これはカトリック教会が採用したこともあり、かなり安定した。
しかし、数百年も経過すると、ずれが鮮明になり、知識人たちから改正の要求がきたのが1200年代。そして1500年代の末に教皇グレゴリオ13世が「グレゴリオ暦」を導入した。グレゴリオ暦は、一年を365.2425年と定め、閏年を400年間に100回ではなく97回のペースで行うことになった。これは非常に正確であるとのこと。そのために1582年の10月5日から14日を取り除き、10月4日の翌日は10月15日になったということを行った。カトリック諸国は、2年後の1584年までにグレゴリオ暦に移行したが、プロテスタントはかなり遅れた。ドイツのプロテスタント諸国は1700年に移行、イギリスは1752年であった。日本では1872年である。さらに遅れたのがソ連で、教会の禁止とともに1918年、中国では1949年に移行した。
このあたりも知らないことばかりなのだが、ユリウス暦の前のローマのカレンダーや、エジプトやマヤがヨーロッパよりもはるかに前に太陽を暦の枠組みに使っていたことなど、衝撃とともに読んだ。オリジナルの英語版も買っておいたので、日本語版はBookscan して、英語版を残そう。