将軍池とチジック・ハウスと精神病院の庭

日本の精神病院の庭園と外国の精神病院の庭園に関して少し考えたことをメモ。
 
日本の精神病院の庭というと、多くの人が松沢病院の将軍池を思い出すだろう。1920年代に医師である加藤普佐次郎が男性患者たちを指導して、移転したばかりの松沢病院に大きな庭園を造った。おそらく蘆原将軍にちなんで「将軍池」と呼ばれている。もともとは池の向こうに富士山を見るという構図で、静岡の日本平ホテルが有名である。ただ、庭園を造っている最中に関東大震災が起きて、将軍池の山が崩れてしまったという。それでも将軍池は日本の庭園師にも愛されており、原田治郎が 1930年前後にJapanese Gardens のようなタイトルの英語の著書を書き、この書物は英語圏で非常に熱心に読まれていたという。そこで原田が松沢病院の将軍池について素晴らしいと書いているとのこと。これらの史実をもう一度きちんと把握しよう。
 
一方、イギリスの精神病院に付属する庭園に関しては、まだまとまったプロが書いた書物などを読んだことがないが、もちろん非常に大規模な庭園プロジェクトが各地で進行していた。これとあまり関係はないが、王立園芸協会から出版された本で、チジック・ハウスの庭園と庭師の話があったので、楽しく読んでみた。ロンドンの西側にケンジントンを経てあと少し行くとチジックにいたる。さらに西に行くと、王立植物園、リッチモンドウィンブルドンなどがある。松沢病院がある東京の西部の郊外と少し似ている。そのチジックに、第三代バーリントン伯爵が18世紀の前半に作ったチジック・ハウスという屋敷と庭園を作る。パレイディオ形式で作られた美しさを持っている。その周囲には素晴らしい庭園がある。19世紀にはいると、この庭園を庭師たちが管理するのだが、その記録が残っており、それを読んで庭師たちの視点で庭園を見ようという本であった。それからしばらくして1890年代になると、近くにあった私立の精神病院が移動してくる。そこでおそらく庭園の世話も行われているのだろう。今度イギリスにいったら、それを読んでみよう。
 
 
庭園師たちに関する本はこちらです。
Davison, Fiona. The Hidden Horticulturists: The Untold Story of the Men Who Shaped Britain's Gardens. Atlantic Books, 2019.