西遊記(八)

この巻の終わりでは「ラマ僧」が出てくるから、一行はチベットのあたりについたということだろう。『西遊記』が現実の地理とどれだけ対応しているのか私には見当もつかないけれども、ラマ僧が出てくると、天竺も近いなあという実感がした。

エピソードは三つで、この巻は医学や薬に縁が深いエピソードが多い。医学に興味がある著者が書いたのだろうか。一つ目は、七匹のクモが美女に化けて、大ムカデが化けた道士とともに、三蔵を糸でぐるぐる巻きにしたり、体を中から腐らせる毒入り茶を飲ませたりするエピソード。毒がすっかりまわる前に「解毒丹」を仏さまにもらって命が助かる。次のエピソードは、もともとは仏たちに仕える霊獣であった青獅子、白象、大鵬が逃げ出して妖怪になった三人の魔王と戦う話。悟空が一人の魔王の体の中に入って、その内臓を痛めつけるというストーリーがある。もうひとつは比丘国での話しで、王の病気を治すために、子供の心臓を抜いて薬にしている国での冒険。そもそも『西遊記』全体が、三蔵がお経を取りにいく話であると同時に、すばらしい薬である人肉を持っている三蔵を、行く先々の妖怪たちが付狙うという、「薬としての人体」という主題を持っているが、このエピソードではそのテーマが中心になる。