古病理学と江戸

必要があって、古病理学の成果として有名な書物をチェックする。文献は、鈴木隆雄『骨から見た日本人-古病理学が語る歴史』(東京:講談社、1998)

縄文時代の日本には結核がなかったこと、大陸からの帰化人が持ち込んだこと、そして、おそらく、結核への罹患率の差が、日本列島の民族的構成に影響を与えたであろうという、あざやかな洞察を含んでいる有名な書物である。なお、同様に、エゾ地においても、和人が侵入する以前には結核が知られていなかったという。

ほしかったデータは、骨梅毒のデータ。江戸の寺院の墓地跡から出土した人骨を分析すると、梅毒が骨にまで影響を及ぼしているものがある。全体でならすと5%くらいだけれども、居住地と身分によってその割合がくっきりと違う。深川の寺院で庶民が多い地区から出土した人骨でいうと7%、武士が多いと考えられる湯島の寺院では3%である。