戦前の精神病質と再犯の調査

吉益脩夫「判決時に於ける初犯者の社会的予後」『民族衛生』16, no.1. (1949), 20-26.

大正期から精神医学者が問題にしていた「中間者」という概念を具体的な研究によって調査した論文。昭和6-7年の東京において初犯で判決を受けたものの精神医学的検査を行い、それから相当の年次を経て、再犯しているかどうか成り行きを検査している。

研究資料は合計で328名の青年で、うち精神医学的に正常が61.6%, 精神病質が 22.0%、精神薄弱が7.6%であった。再犯率を調べると、全体で約65%、正常者は56%に対して、精神異常者、特に精神病質者は82%であるから、非常に顕著に再犯率が高い。特に「無力型」という型を除いた精神病質のグループでは87%にのぼる。精神薄弱は72%だが、誤差が大きく、精神病質ほど問題にはならない。精神機能の中で問題になるのは知能自体ではなく、飲酒癖、職業転換(失業)、欠損家庭、就学不全、遺伝負因などである。

(実は、どのような方法で再犯を調べたのかわからない。出版年が1949年というのも謎のひとつだが、あげられている数字などから推察するに終戦前に完結していた研究らしい)