ニワトリのユートピア

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19世紀から20世紀中葉までのニワトリの画像の展示。記事の内容とは少し違うが、これが雄々しく堂々としたオスと、小さく従順そうなメスの、家族の肖像画のようで、とても面白い。

私が子供の頃に、父親がニワトリのユートピアの魔法陣にはまって、自宅の庭でニワトリを飼い始めた。父親の構想の中では、7羽くらいのニワトリが、昼間は庭で放し飼いで自由を楽しみ、夜は鳥小屋に入って安眠するはずだった。これは昔話の中のニワトリの飼い方で、最近の日本では見たことがない。現実とは違う理想が一人で走り始めたのかもしれないし、何かの本にそう書いてあったのかもしれない。

数年間、家中がニワトリで大騒ぎした。全体としては、ありえない楽しさだったけれども、ニワトリが殺しあうという血みどろの惨劇もあった。最後はニワトリを一羽ずつケージに閉じ込めて採卵鶏にするという、何をしているのかよく分からない状態になった。

大人になってから、イタリアのウンブリアの村で父親の夢のように飼われているニワトリを見た。村の道を歩いて、幸せそうに餌を探していた。今にして思うと、たぶん、父親が飼ったニワトリとは品種が違っていた。でも、父親が夢見たニワトリのユートピアがイタリアの村で実現していたと思うと、なぜか幸せな気分になる。