無症候性キャリアーと731部隊

久しぶりに査読論文を書いていて、それも感染症についてである。日本の戦前の無症候性キャリアーのついての論文である。それに対するコメントに対応するということもあり、日本の731部隊との連関にやはり少し触れないといけない。整理して書くとこのようなフレームワークになるだろう。赤の部分を書き足したフレームワークにする。実際に議論しているのは動物実験だけど、731との関係をゆるやかな形で出すために、数パラグラフ書き足す感じである。
 
日本
チフスのメアリーの終生隔離
チフス動物実験 人体実験?
同性愛者がHIV確認のため血液検査するべきだという議論
 
20世紀初頭のニューヨークで、「腸チフスのメアリー」と呼ばれた有名な症例があった。メアリー・マローンというアイルランドからの移民が、腸チフスの症状が出ないのだけれども、体内に腸チフスを長期間保つことができるというタイプの患者であり、コックとして中産階級の家にやとわれて住んでいたが、何回も雇い主の家族などが腸チフスにかかってしまって、最終的には公衆衛生の隔離病院に二回、合計で30年ほど閉じ込められていたという事件である。無症候性になりうる腸チフスの事例が起こした事件である。
 
この事件を、1990年代にもう一度取り上げたのが、Judith Leavitt である。昔は科学と細菌学と公衆衛生の勝利と描かれていたが、当時の HIV/AIDS の流行が引き起こした、無症候性キャリアーにどう対応するのかという問題と重ねた優れた著作である。 Typhoid Mary というタイトルで読むことができる。 
 
これはアメリカの問題であるが、日本における 1980年代から90年代の HIV/AIDSを見ると、違う形であるが、やはり医学が問題を出しているという形になっている。著名な薬害エイズという形で、血友病の患者に与えられた治療で用いた血液が HIV を含んでいたため、多数の血友病患者が HIVになったという話である。厚生省、ミドリ十字、そして阿部教授が訴訟されて事実上の有罪となった。
 
それなら、日本の戦前の無症候性キャリアー対応はどうだったのか、という議論にする。これまで動物実験がいっぱいあったと書いていたが、今回、このリサーチは731部隊と関連があり、人体実験や赤痢や腸チフスの実地の利用を試すこととも関係を持っていたというフレームワークにしよう。
 
Harris, Sheldon H. Factories of Death : Japanese Biological Warfare, 1932-1945, and the American Cover-Up.  Rev. ed edition, Routledge, 2002.
青木, 冨貴子. 731 : 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く. vol. 8382, あ-58-1, 新潮社, 2008. 新潮文庫.
松村, 高夫 et al. 戦争と疫病 : 七三一部隊のもたらしたもの. 本の友社, 1997.
常石, 敬一. 消えた細菌戦部隊 : 関東軍七三一部隊. 筑摩書房, 1993. ちくま文庫.