江戸後期京都の医者

必要があって、江戸後期・幕末に京都で活躍した蘭方医の臨床談話録を読む。文献は、小石元瑞『檉園小石先生叢話 復刻と解説』正橋剛二編(京都:思文閣、2006)

小石元瑞(1784-1849)は京都の有力な医者で医学教師。彼がおそらく患者を見ながら語ったことを記録した書物が数年前に復刻された。当時の医学教育の素顔が垣間見られる面白いタイプの資料で、細部はわからないながらも、私はよく読んでいる。さすがにまだ学術論文で使ったことはないけれども。

コレラについて:オランダ名コレラ・モルリュスは霍乱という。下痢なら下痢、吐なら吐が、胃腸の上下にかけてそれを害する刺激物を駆除する作用である。『内科撰要』に危険とあるけれども、必ずしもそうではない。人が常用の分量を超えてしきりに過飲し、特に油脂膏のようなものを多く食すると、暖かい腹の中でそれが停滞して腐敗して変性するので、これを撹乱して吐こうとするのである。58-59

処女病について:高貴の人の児女で17,8で未婚の女に良くある。このような人は、肢体の運動をしないどころか、手ぬぐいさえも自分で絞らないくらいで、とにかく気血の運動がなく、顔面は灰白色である。瀉血したら、白い血が出たそうである。67-8.

処女病についての記述をノートしたのは深い意味はない。ただ、ここではじめて白血病を高貴な若い女性と結びつける原型のイメージに出会ったので記しておいた。