Entries from 2015-04-01 to 1 month

患者の病歴という医学上のジャンル

Pormann, Peter E., “Case Notes and Clinicians: Galen’s Commentary on the Hippocratic Epidemics in the Arabic Tradition”, Arabic Sciences and Philosophy, vol.18 (2008), 247-284. 論文の大半がアラビア語の手稿をテキスト化したものと、それを翻訳…

ウィーン大学と精神科・神経科の研究―19世紀末から20世紀初頭

Seitelberger, Franz, “Heihrich Obersteiner and the Neurological Institute: Foundation and History of Neuroscience in Vienna”, Brain Pathology, 2: 163-168 (1992). ウィーン大学の精神科・神経科の教授であったハインリッヒ・オーバーシュタイナー…

18世紀パリのカフェ・オ・レーと薬種商・食品商

メルシエ『18世紀パリ生活誌』上・下、原宏編訳(東京:岩波文庫、1989) 必要があって、メルシエの『18世紀パリ生活誌』を読み直す。いくつかメモ。 「牛乳売り」の項目。甘草水や水売りと同じように、村の農家の女たちがパリに来て牛乳を売る。警察が銅製…

中世ヨーロッパの健康と疾病

Carmichael, Ann G., “Health, Disease, and the Medieval Body”, in Linda Kalof ed., A Cultural History of the Human Body in the Medieval Age (Oxford: Berg, 2010), 39-57. カーマイケル先生は中世からルネサンスのイタリアの医学史、特にペストと公…

患者の物語の位置―1850年から2000年まで

Gillis, Jonathan, “The History of the Patient History since 1850”, Bulletin of the History of Medicine, 80(2006), 490-512. 医学史の定番の話題に、臨床の医師―患者関係における根本的な構造としての「物語と病変の対立」「症状と徴候の対立」などと…

インドの女神と天然痘

<インドの仏-コルコタ・インド博物館所蔵の仏教美術の源流> 東京の国立博物館の「表慶館」での展示。大きな展示ではないが、とても質が高い。教科書でしか見たことがないような、ガンダーラ風やヒンドゥー風の仏像などを観ることができる。とても古い品物…

女性と衛生―短いスカートと梅毒

アイデアのメモ。ベースは以下の二つの文献。 Tomes, Nancy, The Gospel of Germs: Men, Women, and the Microbe in American Life (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1998), pp.157-182. 黒柳徹子・飯沢匡『いわさきちひろ―知られざる愛の生涯…

『運命の力』 新国立劇場

新国立劇場でヴェルディ『運命の力』を観る。 『運命の力』は1861年に書かれた。ヴェルディが1850年代に『リゴレット』『イル・トロヴァトーレ』『椿姫』という文句なしの傑作オペラを書いたのち、晩年の1870年代に偉大な傑作である『アイーダ』『オテロ』が…

肺活量計と人種差別

Braun, Lucy, “Spirometry, Measurement, and Race in the Nineteenth Century”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, vol.60, number 2, 2005: 135-169. 肺活量計は19世紀の初頭に開発された医療機器である。イギリスで診療に用いられ…

肺活量計と人種差別

Braun, Lucy, “Spirometry, Measurement, and Race in the Nineteenth Century”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, vol.60, number 2, 2005: 135-169. 肺活量計は19世紀の初頭に開発された医療機器である。イギリスで診療に用いられ…

シッダ医学の脈診

Daniel, E. Valentine, “The Pulse as an Icon in Siddha Medicine”, in The Varieties of Sensory Experience: A Sourcebook in the Anthropology of the Senses, Devid Howes ed., Toronto: University of Toronto Press, 1991, 100-110. インドの「シッダ…

19世紀精神病院の図書室

Older, Priscilla, “Patient Libraries in Hospitals for the Insane in the United States, 1810-1861”, Libraries & Culture, vol.23, no.3, 1991: 511-531. イギリス、アメリカ、フランス、ドイツなどでは、19世紀の初頭・中葉から、新しい理念に基づいた…

Pathography という単語の英・独・仏の意味の違い

“Pathography” について http://www.oed.com/view/Entry/138798 数日前のOED英単語は "pathography". この単語は全体としては「疾病を記述すること」という意味を持つが、各国語でかなり意味が違う厄介な単語である。ドイツ語の Pathographieと、おそらくそ…

医学史の方法論―「医療にネイティヴな能力」

Löwy, Ilana, Between Bench and Bedsides: Science, Healing, and Interleukin-2 in a Cancer Ward (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1996). レーウィの重要な著書。イントロダクションだけ読む。 レーウィは現代医学史の研究者で、その仕事は…

シャーロット・ブロンテ『教授』

シャーロット・ブロンテ『教授』海老根宏、武久文代、廣田稔訳(東京:みすず書房、1995) 6月の研究会で、川崎明子先生のご著作『ブロンテ小説における病いと看護』(2014) の合評会でコメントをする予定が入った。久しぶりに19世紀のイギリスについての仕事…

2015年度 医療・文化・社会研究会上半期予定 

医療・文化・社会研究会 20世紀の後半から21世紀にかけての医療の大きな特徴の一つは、医療と人文社会科学が交差する議論がされるようになったことかもしれません。医療倫理学、医学史、医療人類学、医療社会学、医療と病気の文学など、さまざまな人文社会科…

2015年度大学院セミナー・リーディングリスト

2015年度大学院セミナー案内 (水曜2時限 10.45-12.15三田キャンパス) Basic aims. 近現代の医学史に関する中級セミナー。基本的な主題に関する重要な一次史料、現在の研究の基礎となった重要な研究文献、新しい方法論や視点を提供した研究文献などを読む。…

2015年大学院授業参考資料2 - 英語で学術的な文章を書くために

Appendix 2 -- 英語で学術的な文章を書くために 大学生・大学院生を念頭に、英語の能力を上昇させるための方法を、学者としての個人的な経験をもとに書いてみました。 英語教育のプロの視点ではありませんので、その点に注意して参考にしてください。 日本語…

2015年医学史大学院資料1-基本レファレンスや教科書など

大学院授業参考資料 Appendix 1 医学史研究の基本文献案内 1) 基本的なレファレンス:主題や時代・地域ごとの研究ガイドと文献案内の形式を取っているレファレンスは以下の3点である。 W.F. Bynum and Roy Porter eds., Companion Encyclopedia of the Histo…

タンボラ火山の噴火(1815)とコレラ菌の突然変異

タンボラ火山の噴火とコレラ菌の突然変異 Gullen D’Arcy Wood, Tambora: The Eruption That Changed the World (Princeton: Princeton University Press, 2014). [Chapter 4, “Blue Death in Bengal”, 72-97.] 先ほどLRBで書評されていた書物の本体を読む。…