Entries from 2013-03-01 to 1 month

谷崎潤一郎『悪魔』『続悪魔』(1912-13)

http://on.fb.me/16Dh428 FB更新。 谷崎潤一郎の初期の短編『悪魔』『続悪魔』です。大仰なタイトルですが、話題はファム・ファタールと神経衰弱で、神経衰弱が東京の当時の現代生活の中で強烈に描かれています。その病者には谷崎自身の経験も反映されている…

谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』

http://on.fb.me/16Dh428 大阪の道修町に出張。新幹線での行帰りの車中で『春琴抄』と『瘋癲老人日記』を読みました。後者について簡単なメモを英語でFBに。好きな文学作品は、なるべく映画や漫画で見ないようにしているのですが、若尾文子の映画化には少し…

戦後の日本精神医学が戦前精神医学とどう対峙したか

http://www.facebook.com/akihito.suzuki.7505FB更新。 戦後日本精神医学は、戦前に自らが行ってきたことと対峙しなければなりませんでした。そのときに、全体主義社会の心理の発生を、新フロイト主義と左派思想の組み合わせで説明した著作であるフランツ・…

台湾高砂族の精神病調査(昭和17年)

on.fb.me/16Dh428 FB更新. アイヌにはじまり、八丈島、三宅島、五家荘、東京池袋、小諸などのさまざまな地域で実施された精神病一斉調査。戦前で最も野心的なものは、1942年に台湾の高砂族を約4,000人にわたって調査したもの。最大のポイントは、高砂族(特…

大正期感化院収容児童の精神医学的調査

on.fb.me/16Dh428 FB更新。大正末の感化院収容児童の精神医学的調査。著者は後に名大教授となった杉田直樹。ヘッケルの進化論を用いて感化院の児童青年は、社会への深化の途上で制止させられた原始的な精神状態であると議論します。

16世紀ロンドンのペストと富裕層向けの演劇

Smith, Milissa, “Personification of Plague in Three Tudor Interlude: Triall of Treasure, The Longer Thou Liueth, the More Foole Thou Art, and Inough Is As Good As a Feast”, Literature and Medicine, vol.26, no.2, 2007: 364-386.後期中世から…

茨城県浮島地方における精神疾患一斉調査(1959)

http://on.fb.me/16Dh428 FB更新。1959年出版の東邦大学精神科による精神医学一斉調査。秩父地方で血族婚と精神分裂病の集積について重要なデータを得たチームでしたが、次の調査地として選定した茨城県浮島は、調査の期待を裏切られました。彼らが期待して…

小泉和子『家で病気を治した時代

小泉和子『家で病気を治した時代』に英語でコメントです。とてもいい本でした。結核が家で「治されていた」ことが詳細に触れられていますが、同じ時期にはもちろん精神病も家で治されていました。そのイメージを造るためにも、私がもっとすぐに読んでおかな…

富岡直方『日本猟奇史』全4巻再刊

富岡直方が1932-33に出版した一連の日本の猟奇関連の著作のリプリントです。江戸から明治・昭和へと並べてみると、「猟奇」における連続と不連続がわかりやすく浮かび上がってくる気がします。英語のコメントです。http://www.facebook.com/akihito.suzuki.7…

石橋俊実他「アイヌの性格」『民族衛生』(1944)

石橋俊実・岡不二太郎・和田豊治「アイヌの性格―青少年における調査にもとづいて―」『民族衛生』vol.12, no.6, 1944: 339-352.北大精神科の石橋俊実は1942-3年にアイヌの青少年150人程度に性格検査を行いました。内村祐之の時代の梅毒検査・分裂病等の検査…

西内啓『統計学が最強の学問である』(東京:ダイヤモンド社、2013)

西内啓『統計学が最強の学問である』(東京:ダイヤモンド社、2013)Comments in Englishhttp://www.facebook.com/akihito.suzuki.7505

井村恒郎「戦争神経症の印象」

井村恒郎「戦争神経症の印象」『青年心理』, 7(1), 87-90, 1956.English summaryhttp://www.facebook.com/akihito.suzuki.7505

都会と田舎とヒステリーと神経衰弱

井村恒郎「都市と農村における神経症の比較調査」『精神衛生研究』vol.2, 1954-2: 21-29.国府台の精神衛生研究所の井村と、群馬大学の精神科のチームが協力して行った、都市部と地方部における神経症の比較である。国府台病院と群馬大の外来の二つの組織をベ…

日中戦争下の廣東における精神病一斉調査

笠松章「廣東地方に於ける比較精神医学一資料」『精神神経学雑誌』vol.46, no.4, 1942: 188-194.東大精神科を卒業した内村祐之の弟子で、軍医として応召されて南支の廣東地方の一部落に2年半駐留した。笠松が「B郷」と呼ぶこの部落は人口は7,000人ほどだが、…

第二次大戦時ビルマにおける精神病調査

加藤正明「ビルマ民族の精神医学的考察」『精神神経学雑誌』vol.49, no.6, 1947: 112-115.短い論文だが、重要な意味を持つ。日本の帝国精神医学はのちに東大教授となった内村祐之が1930年代にアイヌを対象として始めて、進化論的な症状の解釈方法を確立した…

外傷性神経症と労災とキリスト(笑)

高橋正義、水町四郎、高臣武史、宮司克己「外傷性神経症」『日本医師会雑誌』35巻10号,1956: 539-552.「外傷性神経症」は日本では1920年代から既に議論の対象となっていた疾患であったが、戦後になると、その存在自体を否定する声は少なくなり、労働災害にま…

九大の電気痙攣療法

安河内五郎・向笠廣次「精神分離症の電撃痙攣療法について」『福岡医大誌』vol.32, no.8: 1939, 1437-40.1930年代は、精神分裂病の治療における大きな転機が準備されはじめた時期であり、基本的には不治であると考えられていた分裂病に対して、効を奏するい…

血族婚と精神障碍の重積

岡部 重穂「血族婚地域における精神医学的一斉調査」 『精神神経学雑誌』59(8), 1957, 663-676.1957年に受理された論文であるが、調査が実施されたのはそれよりも15年ほど前の1942年である。7月1日から鹿児島県の甑島において2週間にわたって行われた。著者…

精神疾患の「淘汰」の問題

新井尚賢、柴田洋子、飯島泰彦、赤羽晃、戸田賢江、丸山俊男「秩父山村における一斉調査による精神医学的考察ならびに他農村との比較」『精神神経学雑誌』60(5), 1958: 475-486.血族結婚、分裂病の寛解と社会生活の地域差などの問題について、素晴らしい洞察…

内村祐之からメモ

内村祐之は、日本が生んだ精神医学の「スター」の一人であったが、その理由は、父親が内村鑑三だったこと、一高のエースピッチャーだったことなどにあると思われる。しかし、もし精神医学から「スター」が出るとしたら、内村の時代なのかなあという、構造的…

戦後も継続した戦争神経症

今泉恭二郎・清水英利・氏原敏光・佐々木敏弼・元木啓二・森井章二「第二次大戦中発呈し現在に至るまで戦争神経症状態をつづけている2症例」『九州神経精神医学』13巻3号、1966: 643-648.戦争神経症が継続していること、5年ごとに軍人傷病恩給の申請が更新さ…

アウシュヴィッツの「死の天使」

ジェラルド・アスター『最後のナチ メンゲレ』広瀬順弘訳(東京:読売新聞社、1987)医師・医学者でアウシュヴィッツの「死の天使」として悪名高いヨーゼフ・メンゲレの一般向けの評伝を読む。アウシュヴィッツの強制収容所に収容された生存者の手記などが中…

泉鏡花「婦系図」

泉鏡花『婦系図』鏡花の夢幻・怪異系の作品を読んで、昔はよく分からなかった作品が心に響いたので、鏡花を読む時期なのかもしれないと思って、「婦系図」を読んでみた。大学生に入ったばかりの頃に読もうとして、退屈で退屈ですぐに投げ出した作品である。…

皮膚科学の模型像(ムラージュ)の日本への導入

石原あえか「日本におけるムラージュ技師の系譜―ゲーテを起点とする近代日独医学交流補遺」『言語・情報・テキスト』東京大学大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻紀要、19(2012), 1-12.「ムラージュ」というのは、医学教育で用いられる精密な病理標本…

泉鏡花「海神別荘」

泉鏡花「海神別荘」鏡花全集で「天守物語」と収めたのと同じ巻(二十六巻)の別の戯曲「海神別荘」が面白かったので読んでみた。「天守物語」が天守閣の最上層を舞台にした空を飛ぶ魔物と鷹の話だとしたら、「海神別荘」は、その名が示す通り、海底に住まう…