昭和28年の夏休みを利用して、小学校を通じて家の人や部落の人に聞いて記入したものを担任教師が集めた。4000枚で1万5000点のものが収集された。 3 県の衛生部長が序文を書いているが、実際に保健所で調査をした所長の考えとは、少し趣が違う。山形県衛生部長、吉田幸雄:迷信俗信が根強く蔓延して誤謬と害毒を流しているが、同時に、これらの中にも一概に否定しえない、すなわち科学的合理的なものもまた少なくない。有害無益なものは改善し、無害有益なものは、大いにこれを活用する。 1 と書いているのに対し、寒河江の所長は、寒河江保健所所長:斯波八郎:有害なもの、無害なものであってもよく、窮屈な農村生活のうるほいとして残しておいて差支えないもの、生活の点躾の面そのほかの理由でむしろ助長した方がよいものと三種類に分けられる。ここでは時日の都合や解釈の相違もあるので、羅列するだけである。 2 より積極的に衛生習俗を活用しようとしている。これは、最近読んだ川内淳史が言うような、郷土意識の中で衛生・医療を改革しようとした戦前の運動と関係があるのかな。
内容は、眺めただけだけど、面白かった。科学的な根拠がありそうなもの、母親から聞いたことがあるもの(「食べてすぐ横になると牛になる」)、荒唐無稽なもの、嫌悪感を催させるもの(「脳みそを食べるとてんかんが治る」「墓石の土の骨水を飲むと肺病が治る」、「死人に上げた団子を人の焼ける油で焼いて食べさせるとてんかんが治る」)など、多様だった。気が付いたことを羅列する。「遺伝する」病気が意外に少ないように思う。精神病については、キツネ憑きを中心に22の迷信が紹介されているが、遺伝に触れているものは一つもない。畸形については、これは遺伝というより、妊娠中の事故や不始末で起きる。妊娠中にウサギの肉を食べるとみつ口の子が生まれる、あひるを食べると四本指の子供が生まれる、火を見ると赤い痣がある子供が生まれるなど。