Entries from 2006-03-01 to 1 month

大正期の精神鑑定

久しぶりに大学に行ったら、研究室の方に沢山の論文をご恵与いただいていた。その中で、かねがねご令名は伺っていた気鋭の日本の精神医学史の研究者の兵頭晶子さんからご論文を沢山送っていただいた。近代日本の憑物・憑依と異常心理をめぐる言説の非常に水…

お休み

しばらく論文の締め切りや学会で忙しい日が続いてブログの更新が滞っていますが、あと数日お休みを頂きます。

気候馴化の言説(2)

南方医学のペーパーの締め切りが迫ってきた。今回は気候馴化の言説の話なので、数少ない古典的な研究論文を読んでいる。このブログでもだいぶ前に取り上げた科学的言説の地理学の第一人者、リヴィングストンが1987年に出したペーパーである。気候馴化の概念…

Wellcome Library Remote Access

今日は研究リソースの紹介を。 ウェルカム医学史研究所の図書館が、図書館所蔵(というのだろうか)のデータベースにリモートアクセスできるサービスを提供しています。 ウェルカムの図書館で現在有効のパスを持っている人が、名前と番号でログインして使え…

人種的隔離の起源

南方医学のリサーチのついでに、ずっと読みたいと思っていた人種的隔離の医学的起源についての古典的な論文を2点読んだ。 “segregation” に人種によって隔離するという意味が現れたのは、20世紀の初めだという。手持ちのOEDでは1903年が初出である。ちょうど…

気候と人体(1)

オーストラリアの気候馴化をめぐる言説を研究した論文を読む。 南方医学プロジェクトの一環で、ウォリック・アンダーソンの論文を読む。アンダーソンは、私がファンの医学史家の一人で、どの論文もクリアで切れが良い。この論文も例外ではない。 オーストラ…

ビルマの軍医

4月上旬の学会の準備を大急ぎしなければならない。5年ほど前に、日本の南洋医学についてあるコンファレンスで話してみないかというお誘いがあって、またいつもの悪い癖でうかうかと引き受けてしまったことがある。このコンファレンス自体が流れてしまったの…

『よみがえる天才アルキメデス』

社会復帰しました。ブログも再開します。いろいろブログの中での懸案事項もありますが、順番に負債を返していくということで、頂いた書物の『よみがえる天才アルキメデス 無限との闘い』の話です。 先日新聞の一面に、私が尊敬する先輩の書物の広告があった…

数日お休みをいただきます

数日お休みをいただきます。 ちょうど、トラックバックや大事なコメントをいただいた時で、申し訳ありません。 週明けに再開します。 この数週間、いいペースで更新できていたのですが。

患者の物語の文学的分析

19世紀の結核患者の日記を分析した論文を読む。 医学史の中でわりと新しいジャンルに、患者が病気・身体をどう認識したかを問う社会史研究とでも呼べるものがある。このジャンルのとても有名な本としては、バーバラ・ドゥーデンの『女の皮膚の下』などがある…

現代医学のオリエンタリズム

現代医学をオリエンタリズムとして捉える論文を読む。 現代医学には、患者を物象化し、パターン化し、患者を身体の異常に還元する強力な制度的なドライブが存在する。その結果、現代医学の病気に関する言説は、患者についてのモノローグになっている。これが…

若草物語・ナース編

ある論文を読んでいて、ルイーザ・オルコットが看護婦としての経験を書き綴ったテキストがあることを知る。こういうテキストというのは、読みたくなった時が勝負で、メモしておいて後から借り出して読もうと思っていると、一生読めない。(そういう to read …

相対的不平等と健康

社会疫学の古典的な論文を読む。 不平等が健康に与える影響を論じたウィルキンソンの書物は、イチロー・カワチのそれと並んで、よく引用されている。秘書が電子ジャーナルからプリントアウトしてくれた未読論文の山の中に、ウィルキンソンの主張をコンパクト…

ジャマイカと植民地医療

ハンス・スローンが1680年代のジャマイカで行った医療についての研究論文を読む。 4月にサンフランシスコで学会があるが、そこでは20世紀の日本を題材に医学と気候馴化の話をしようと思っている。資料を分析するアイデアを探して文献を漁っていたら、扱って…

流行病のカズイスティーク

未読山の中から出てきた19世紀のイギリスの衛生改革の論文を読む。 19世紀イギリスの衛生改革の歴史研究はきわめて水準が高い。レッセフェールと福祉国家の関係、中央集権と地方分権といった、長いこと近現代社会の中心的な問題として認識されてきた枠組みの…