Entries from 2017-07-01 to 1 month

チジック・ハウスの精神病療養所の研究プロジェクト

museumofthemind.org.uk ロンドン郊外のチジック・ハウス。18世紀に完成された貴族の館で、現在でも人気があるスポット。この館の一角が精神病の療養所に使われていた。19世紀の末から20世紀の初頭の話で、患者はイギリスの富裕な人々で定員は30名から40名、…

モンテヴェルディ「エロティック・マドリガル」

http://amzn.to/2eXp5Nk 日曜の午前中に、庭仕事をして、少し仕事をして、午後にはモンテヴェルディの「エロティック・マドリガル」を聴いている。古くて中古でないと手に入らないけど、とても評価が高いCDらしい。30年ほど前に、渋谷の「フリスコ」という輸…

医療人文学の日本版は可能なのか

Heartfelt images: learning cardiac science artistically | Medical Humanities イギリスのBMJ の医療人文学系の主題の論文を集めた雑誌 Medical Humanities に面白い論考。これは芸術系の論考で、医学生と歯科学性に心臓に関連するアート作品を制作させて…

心臓と脳の外科医学についての書評 

Some surgeons may be psychopaths—but that’s no bad thing | Prospect Magazine イギリスの雑誌 Prospect にジョアナ・バーク先生の外科医についての二冊の書物の書評。とても面白いのでまず読んでみるといい。心臓と脳という二つの重要な臓器、外科手術の…

カレーのCMと食欲と性欲

www.glico.com ツイッターで時々登場するグリコのカレーのCM. ご覧になればわかりますが、食欲と性欲が完全に同期されている映像である。女優さんが辛いカレーを食べているのか、貪欲に淫乱に性行為をしているのか分からなくなるように作られていると私は思…

心臓の宗教的な意味

publicdomainreview.org 医学史の通史で17世紀の章に入った。血液循環のハーヴィーや機械論のデカルトを論じる章である。前回のパラケルススに較べるとずっと好きな人物たちなので、予習に向かう足取りも軽い(笑) ハーヴィーは『動物の心臓ならびに血液の…

一夫多妻制のメリットとデメリット(鳥の話です 笑)

日本野鳥の会の『野鳥』に面白い記事があったのでメモ。 『野鳥』2017年8月号(No.817)濱尾章二「鳥の繁殖生態学」 鳥のオスの交配行動を見て、一夫多妻がプラスなのかマイナスなのかに触れる。もちろん地雷だらけの場に踏み込むきわどい記述である。著者が…

ジャコメッティの夢の立体化

Giacometti, Alberto, and Barbara Wright. "The Dream, the Sphinx, and the Death of T." Grand Street, no. 54 (1995): 146-54. ジャコメッティが自分の夢、「スフィンクス」という名前の閉店する売春宿への訪問、そして友人の死、について書いた記事を読…

鎖国時代の疾病のエコシステム・メモ

Hanley, Susan B. Everyday Things in Premodern Japan : The Hidden Legacy of Material Culture. University of California Press, 1997. Rotberg, Robert I. Health and Disease in Human History : A Journal of Interdisciplinary History Reader. The …

山梨のコレラ・長崎のコレラ

飯島、茂. "山梨県下に於ける安政5年の暴瀉病流行日記市川文書に就いて." 中外医事新報, no. 1121 (1935): 282-88. 安政5年の江戸を含む地域のコレラ大流行の際に、山梨県下の人物が記した日記の採録。オリジナルとその記録についての情報が収録されているか…

パヴロフの伝記

Todes, Daniel Philip. Ivan Pavlov : A Russian Life in Science. Oxford: Oxford University Press, 2014. イヴァン・パヴロフはロシアとソ連の生理学者・神経学者で、イヌにベルの音を聞かせて餌をあげる条件反射の研究で名高い。ノーベル賞の受賞は1903…

夜長姫と耳男ー蛇の生き血と二つの疫病について

「夜長姫と耳男」(よながひめとみみお)は坂口安吾が1952年に刊行した短編で、「桜の花の満開の下」と並ぶ傑作のひとつ。飛騨の匠である耳男が3年かけて仏を彫る物語によせて、日本の民話の構成、敗戦後の男たちの空虚、性という亀裂などが描かれた作品であ…

江戸時代の民間治療 

眠竜翁, 宗哲 奈良, 正哲 前川, 政章 木内, 獨妙 申斎, 増業 大関, 恵 浅見, and 健 安田. 耳順見聞私記 . 袖珍仙方 . 竒方録 . 漫遊雑記藥方・農家心得草藥法 . 妙藥手引草 . 掌中妙藥竒方. 近世歴史資料集成. Vol. 第2期 ; 第10巻 . 民間治療 / 浅見恵, 安…

立ち食いの駅そばについて

駅そばを立ち食いで食べるのが好きだ。東京の立ち食いそばは、あまりにも安物だとか、そば色をしたうどんであるとか、色々と良くない真実があって、それほどいかない。あと、東京でそばを食べるなら、少しまじめになって座って食べることが多い。でも、他の…

精神疾患の写真と患者の経時的な人生について

Pearl, Sharrona. About Faces : Physiognomy in Nineteenth-Century Britain. Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 2010. 第5章・6章が、19世紀後半のイギリスの精神医療における写真の利用を論じている。ヒュー・ダイアモンド、ジョン・コノリー…

ダッハウ強制収容所の医療人体実験の描写

www.atlasobscura.com ナチス・ドイツの強制収容所で、医師たちによる凄惨な人体実験が行われたことで悪名が高いダッハウ強制収容所。そこに収容されていたゲオルグ・タウバー (Georg Tauber) が、絵が結構上手で、SSの将校に見込まれて収容所内の様子を記述…

大学と学術の暗い将来について

www.timeshighereducation.com THE (Times Higher Education Supplement) からの配信。主にイギリスとオーストラリアの大学教員などを調査して出された議論。大学と学術のコアにおける深く根本的な浸蝕について。私自身、これを読みながら深く反省する部分や…

精神医療と音楽の歴史 参加申し込みページ 

igakushitosyakai.com 9月9日と9月16日に、東京都立松沢病院にて、以下の講演会を行います。参加費はいずれも無料ですが、お手続きのうえ、ご参加ください! 参加用のページを開設いたしましたので、そちらからお手続きが便利になります。 ***** 講演会 精神…

がんの放射線治療のラジウムの国際的な分配について

Oxford DNB: Lives of the week Oxford DNB の今日の人物はヘレン・チェインバーズ (Helen Chambers, 1879-1935) 20世紀初頭のイギリスの優れた医師で、放射線治療とがんの研究で優れた業績を挙げた。インドで官僚をしていた人物の娘として生まれ、ケンブリ…

精神医療と音楽の歴史 アウトリーチのお知らせ

9月9日と9月16日に、東京都立松沢病院にて、以下の講演会を行います。参加費はいずれも無料です。お手続きのうえ、ご参加ください! ***** 講演会 精神医療と音楽の歴史 2017年9月9日(土)14時30分~16時30分東京都立松沢病院リハビリテーション棟105号室 2…

精神医療の家父長的な体制についてのフェミニズムの批評

Wollstonecraft, Mary, and Gary Kelly. Mary, and, the Wrongs of Woman. Oxford World's Classics. Rev. and corrected ed.: Oxford University Press, 2007. 『マライア、あるいは女性の虐待』は、『女性の権利の擁護』で名高いメアリ・ウルストンクラフ…

パノプティコンとコリドーと精神病院

soundcloud.com ロジャー・ロックハースト先生のロイ・ポーター・レクチャーを聴いた。ロックハースト先生は英文学者で、トラウマ、ミイラ、ゾンビなどについての面白い本をたくさん出版している講演である。今回は恐怖について書いているようである。講演の…

身体診察 (physical examination) の重要性について

医学書院/週刊医学界新聞(第3231号 2017年07月10日) 週刊医学界新聞で医師3人による「身体診察」の重要性について。身体診察というのは英語でいうと physical examination で、医師の5感、特に視覚、聴覚、嗅覚、触覚を用いて患者の体に触れて、疾病を診断…

ロンドン大学・ゴールドスミス校のWS <医学と音楽とメランコリーと狂気> 

7月22日にロンドン大学・ゴールドスミス校で、音楽史の松本先生が主催されるワークショップが開催されます。教会での開催という、近世の音楽史ならではの開催場所です。精神医療と音楽史に関する主題のペーパーで、16世紀から18世紀が主題です。優れた音楽の…

京大 iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門

www.cira.kyoto-u.ac.jp おそらく八代嘉美先生だと思うが、京大 iPSの上廣倫理研究部門から2016年度の実績報告書をいただいた。どうもありがとうございます。綺麗なカラーで、面白い味があるイラストが入り、研究員たちの実績が写真入りで面白く紹介され…

チャールズI世の左耳のイヤリング

www.atlasobscura.com イギリスの国王で17世紀に処刑されたチャールズI 世。彼がイヤリングの愛好者であったことを知る。 16世紀から17世紀にかけてイギリスの男性エリートたちの間でイヤリングが流行した。チャールズのほかにも、ウォルター・ローリーも…

ジャコメッティ展のカタログ

www.tate.org.uk いま、ロンドンの Tate Modern で開催中のジャコメッティ展のカタログが送られてきたから、土曜の朝に読んだ。昨日の二つの仕事で、春学期の仕事がだいたい終わり、少しみずみずしい時間を持つことができた。 ジャコメッティの彫像は記憶に…

精神療法の国際史プロジェクト

historiesofpsychotherapy.net ロンドン大学 UCL の Sonu Shamdasani 先生が主催する精神療法の国際史のプロジェクト。イギリス、ヨーロッパ、北米、中南米、日本などの、さまざまな地域の精神療法の歴史を理解するプロジェクトです。通時代的で、多様な主題…

古代ギリシアの精神医学の新刊

historypsychiatry.com 新刊案内は、古代ギリシア医学における精神医学のテキストについて。この主題は、精神医療の歴史の一回目に来る話だから、いい話が欲しくて、かなり研究書を読んだけれども、結局はヒポクラテスの「神聖病について」の医学と宗教の対…

William Bynum Prize 2016

Bynum Prize 2016 annoucement - Global Health Histories, The University of York 雑誌 Medical History が主催している、William Bynum Prize. 投稿された論文の中での新人賞である。受賞論文はミュンスター大学の David Freis , 次点がエクゼダー大学の …