Entries from 2009-07-01 to 1 month

80年前の知能テスト

昨日記事にした、新潟の知能テストの問題が付されていたので、これを紹介します。 1) 林檎は赤い2) 魚は水の中に泳いでいる水の中「に」というのが、語感として私には少し違和感がある。 「底」が入るべきなのかな。 このあたりはまあいい。 3) 男の児も女の…

新潟の智能テスト

必要があって、昭和3年に新潟の小学校で実施された智能テストの結果を分析した論文を読む。式場隆三郎「新潟市小学児童の智能基準並に劣等児の精神病学的観察」『北陸医学会雑誌』44(1929), no.285, 167-311. 著者は二笑亭の取材、ゴッホの病蹟、山下清の紹…

中国医学と出版

同じ論文集から、北宋・南宋の時代の中国医学のテキストの出版についての論文を読む。文献は、Kosoto, Hiroshi, “Volumes of Knowledge: Observations on Song-Period Printed Medical Text”,in Andrew Edmund Goble, Kenneth R. Robinson, and Haruko Wakab…

医学のシルクロード

必要があって、鎌倉時代の医者、梶原性全(かじわらしょうぜん)についての研究論文を読む。文献は、Goble, Andrew Edmund, “Kajiwara Shōzen (1265-1337) and the Medical Silk Road: Chinese and Arabic Influences on Medieval Japanese Medicine”, n And…

アイ・ウェイウェイ展

六本木の森美術館で開催中の『アイ・ウェイウェイ展』に行く。ウェブサイトは以下の通り。http://www.mori.art.museum/contents/aiweiwei/アイ・ウェイウェイは、私は寡聞にして存じ上げていなかったけれども、現代中国の有名なクリエイターで、北京オリンピ…

天然痘と民間信仰

必要があって、江戸時代の天然痘をめぐる民間信仰をめぐる書物を読み直す。文献は、ハルトムート・ローテルムンド『疱瘡神 江戸時代の病いをめぐる民間信仰の研究』(東京:岩波書店、1995) 著者はフランスの研究者で、彼が書いたこの書物は、江戸時代の日…

日本中世の医学

必要があって、新村拓『日本医療社会史の研究』(東京:法政大学出版局、1985)を読み直す。この書物自体は、古代・中世の医学史の色々な主題に関するややまとまりを欠いた論文集だし、きっと、それぞれのテーマについて、その後もっと研究が進んでいると思…

『日本梅毒史の研究』

必要があって、江戸時代から開国期を中心に、日本の梅毒の歴史を論じた論文集を読む。文献は、福田眞人・鈴木則子編集『日本梅毒史の研究』(京都:思文閣、2005)。梅毒の起源については、新大陸起源説や突然変異説などのあいだで色々と論争があるが、1495…

『気候変動の文明史』

必要があって、日本の気候変動の歴史を説いた一般向け書物を読む。文献は、安田喜憲『気候変動の文明史』(東京:NTT出版、2004)気候の歴史というのは、その基礎となるデータを得る方法が、炭素同位体だとか考古学的分析だとか、基本的に理系の方法なので、…

『生きることの近世史』

必要があって、ずっと読みたかった塚本学『生きることの近世史-人命環境の歴史から』(東京:平凡社選書、2001)を読む。医学史の視点から参考になることが非常に多く、もっと前に読んでいたらと、臍を噛む箇所がとても多かった。国家の歴史を離れて、日本…

古着とボロの歴史

必要があって、古着とボロの歴史を解説した書物を読む。文献は、朝岡康二『古着』(東京:法政大学出版局、2003)江戸時代から古着・古布などを集めて売りさばく商業が栄えていた。江戸では日本橋富澤町、神田川河岸、柳原土堤町などが古着問屋が集中する町…

『天城越え』

新国立劇場の『鵺』で田中裕子さんを観たので、懐かしくなって彼女の映画作品を借りて観た。三村晴彦監督の『天城越え』(1983)。渡瀬恒彦、平幹二郎、吉行和子といった名優たちが勢ぞろいしているけれども、映画全体が、田中裕子さんが演じる娼婦(原作の表…

ベッドトリック 1

少しずつ読むことにしている、世界の艶笑譚の文芸評論を取り出して読む。文献は、 Doniger, Wendy, The Bedtrick: Tales of Sex and Masquerade (Chicago: University of Chicago Press, 2000). ベッドトリックBedtrickというシェイクスピア学者たちが使う用…

現代能楽集「鵺」

新国立劇場の小劇場で「鵺」を観る。坂手洋二の脚本に、鵜山仁が演出。坂東三津五郎、田中裕子さんが出演。あと、私が名前を知らない役者さんだったけれども、たかお鷹さんというベテランのかたと、村上淳さんという若い俳優が出ていた。全体は三部構成で、…

棘付き首輪と犬の拷問

必要があって、戦前に行われた、睡眠不足が精神機能や脳などの組織に与える影響を、実験的に調べた研究を読む。文献は、岡崎昌「睡眠不足の実験的研究」『神経学雑誌』25(1925), 55-100.ちょっと調べていて気がついたのだけれども、大正期は「睡眠」が医学研…

疾病サーヴェイランスの歴史

必要があって、アメリカの疾病のサーヴェイランスの歴史を論じた書物を読む。文献は、Fairchild, Amy L., Ronald Bayer and James Colgrove, Serching Eyes: Privacy, the State, and Disease Surveillance in America (Berkeley: University of California …

鵺(ぬえ)

必要があって、世阿弥の謡曲の「鵺(ぬえ)」を読む。岩波の古典大系(いわゆる「新大系」ではなくて、古いほうの大系)の『謡曲集・上』の中の数ページの作品。なお、以下はネタバレがあります(笑)。諸国を遍歴している僧が、芦屋の塩焼きの寒村にやって…

『アウトブレイク』

必要があって、映画『アウトブレイク』をDVDで観る。ダスティン・ホフマンが、主人公の陸軍の疫病対策部の医者で熱血漢の役を演じている。1995年の作品で、前年に出たリチャード・プレストンのノンフィクションの手に汗握るバイオ・スリラーのノンフィクショ…

熱帯の自然の表象

必要があって、熱帯の表象のイメージを論じた論文を読む。文献は、Arnold, David, “’Illusory Riches’: Representations of the Tropical World, 1840-1950”, Singapore Journal of Tropical Geography, 21(2000), no.1, 6-18.近代にはいって、熱帯地方につ…

日本中世の農村

必要があって、日本中世の気候が農村に与えた影響を論じた論文を読む。文献は、西谷地晴美「中世前期の温暖化と慢性的農業危機」『民衆史研究』No.55(1998), 5-22. 「日本史にも自然科学の視点を」という熱心な呼びかけをしている論文で、その脈絡で気候研究…

展覧会・博物館としての世界

未読山の中から、19世紀の展覧会とオリエンタリズムを論じた論文を読む。文献は、Mitchell, Timothy, “The World as Exhibition”, Comparative Studies in Society and History, 31(1989), 217-236. いかにもというトピックかと思ったけれども、読んでみたら…

遺伝の概念史

未読山の中から、遺伝の概念史の論文を読む。文献は、Pearson, Roger, “The Concept of Heredity in the History of Western Culture: Part One”, The Mankind Quarterly, 35(1995), no.3, 229-256.Herrnstein と Murray が1994年に出版した『ベル・カーヴ』…

ペストと境界とコミュニケーション

未読山から、1630年のフィレンツェのペストについての論文を読む。文献は、Calvi, Giulia, “A Metaphor for Social Exchange: the Florentine Plague of 1630”, Representations, no.13(1986), 139-163. ちょっと抽象的で分かりにくい部分が多かったけれども…

新潟の恙虫

未読山の中から、新潟の恙虫病に関する概観としては最も古い論文を読む。文献は、山崎元修「山崎学士ノ恙虫被害地並ニ其病性取調上申書」『北越医学会会報』No.144(1904-5), 605-640. 新潟の恙虫病というのは、新しい医学史のモノグラフが書かれる条件をすべ…

ロボットが平安の官女と交接すると

必要があって、田中貴子『百鬼夜行の見える都市』(東京:ちくま学芸文庫、2002)を読む。以前から読みたかった本で、期待にたがわぬ面白い本だった。全体の議論としては、百鬼夜行を平安京の都市論に位置づけようという書物である。『今昔物語』などに現れ…

医師資格を持つ国会議員

必要があって、医師資格を持つフランスの国会議員の分析を読む。文献は、Ellis, Jack D., The Physician-Legislators of France: Medicine and Politics in the Early Third Republic, 1870-1914 (Cambridge: Cambridge University Press, 1990)ちょっと調べ…

加賀藩の麻疹

昨日と同じ著者の、麻疹の研究を読む。文献は、前川哲朗「藩政期村方における疾病と医療活動」『市史かなざわ』10(2004), no.3. 27-47. 江戸時代に天然痘は小児病化していたが、麻疹はいまだに平均すると20年間隔で襲来する病気だった。麻疹が常在化して小児…

加賀藩のコレラ

必要があって、加賀藩のコレラと天然痘の流行を調べた地方史研究の論文を読む。文献は、前川哲朗「疱瘡・コレラの流行と対策―藩政期疫病史の試み―」『市史かなざわ』6(2000), 62-76. 本吉(たぶん、現在の白川市美川本吉で、本吉湊があった)、福浦(同じく…

キーツのラブレター

書棚で別の本を探していたときに、ふと目に留まったキーツの手紙を読む。文献は、Keats, John, Letters of John Keats: a Selection, ed. by Robert Gittings (Oxford: Oxford University Press, 1970).キーツ(John Keats, 1795-1821)は若くして結核で死んだ…

民間療法

必要があって、昔の民俗学の雑誌の民間療法特集号を読む。文献は、「民間療法特集号」『旅と伝説』1935年12月号(通巻96号)地域ごとに草根木皮を中心に民間療法を紹介する記事をまとめたもの。記述も長さもまちまちだけれども、まあそういうものだろう。同…