Entries from 2014-01-01 to 1 year

18世紀イタリアの女性解剖学者と17世紀ヴェニスの情報拠点としての薬局

Dacome, Lucia, “Women, Wax and Anatomy in the ‘Century of Things’”, in Sandra Cavallo and David Gentilcore eds., Spaces, Objects and Identities in Early Modern Italian Medicine (Oxford: Blackwell Publishing, 2008), 50-78. Vivo, Filippo de.…

近代における症例と文学

Pethes, Nicolas, “Telling Cases: Writing Against Genre in Medicine and Literature”, Literature and Medicine, vol.32, number 1, Spring 2014, 24-45. 同じく Medicine and Literature の症例特集から、近代ドイツの文学と症例についての論文。概念的…

古代・中世医学における症例と注釈

Pomata, Gianna, “The Medical Case Narrative: Distant Reading of an Epistemic Genre”, Literature and Medicine, vol.32, number 1, Spring 2014, 1-23. 雑誌 Literature and Medicine が症例というジャンルという特集を組んだ。ちょうど症例についての…

「届きました!9万人の​声」

都議会のヤジに関する署名を募った Change.org を通じて、「届きました!9万人の​声」というタイトルのメールをいただきました。 都議会キャンペーンに賛同していただいた皆様 こんばんは。ニュースでの報道をご覧になったと思いますが、23日午前、都議会自…

医療・科学・テクノロジー:人類学と人間科学複合領域の対話

7月12日に慶應三田で以下のシンポジアムが開催されます。 慶應義塾大学 論理と感性のグローバル研究センター 国際シ ンポ ジウム 医療・科学・テクノロジー:人類学と人間科学複合領域の対話 日時:2014年7月12日(土)9:50~17:30 場所:慶應大学三田キャン…

世紀転換期イギリスの医学における「ジェントルマン」という社会的階層

Lawrence, Christopher “Incommunicable Knowledge: Science, Technology and the Clinical Art in Britain 1850-1914”, Journal of Contemporary History 20(1985), 503-520. 19世紀末から20世紀にかけてイギリスの医学が科学、特に実験室の医学をどのよう…

ベルナール『実験医学序説』

クロード・ベルナール『実験医学序説』は、医学や生物学のみならず、エミール・ゾラの自然主義の文学や、哲学者たちにも大きな影響を与えた。岩波文庫の三浦訳は、1938年初版だから、一度の改訳を経て都合80年続いた訳書である。実験医学、生物を対象にした…

古代の科学・医学の比較史

Geoffrey Lloyd and Nathan Sivin, The Way and the Word: Science and Medicine in Early China and Greece (New Haven: Yale University Press, 2002) 異なった地域を比較する共同研究の一つのお手本を提供してくれる書物である。主題は古代のギリシアと中…

ロジャ・クーター先生と日本の研究者によるワークショップ

来週はロンドンから招聘したロジャ・クーター先生と、日本における医学史・科学史・科学哲学・STSにおいて重要な仕事を発表してきた研究者を中心とした一連のワークショップが東京と京都で開催されます。一連のワークショップの主題は、近現代の医学・医療の…

「鞭打ち症」の研究

「鞭打ち症」という言葉がマスメディアに取り上げられ、1967年(昭和42年)4月には慶應医学部・病院が精神神経科外来に「鞭打ち症外来」を設置した。その中で行われた難治例の鞭打ち損傷慢性患者の研究。 鞭打ち症や鞭打ち損傷というのは、自動車交通事故の…

「患者」vs「ヘルスケアの消費者」

1980年代から、患者 patient という言葉の同義語として、ヘルスケアの消費者 health-care consumer という語が用いられている。この語は医者に不人気である。ちなみに医者の同義語は health-care provider である。この語は市場原理主義が作り出したものでは…

昭和戦前期の大阪の女給

大林宗嗣『女給生活の新研究』(1932)『近代婦人問題名著選集 社会問題編 第三巻』五味百合子監修、西村みはる解説(東京:日本図書センター、1983) カフェーの女給は大正末期から急激に増加した職業婦人の一形態であるが、この論考は昭和5年に大阪で調査…

『短編で読むシチリア』より

夏に学会でシチリアに行くので、シチリアに関連する作品をぼつぼつと読んでいる。その中で武谷なおみ編訳『短編で読むシチリア』に収録された三つの短編。フェデリーコ・デ・ロベルト「ロザリオ」、ジョヴァンニ・ヴェルガ「ルーパ」、ルイージ・ピランデッ…

クラインマン「ケアに影響を及ぼす文化的要素」

アーサー・クラインマン先生が東京武蔵野病院で行った講演が、『週刊医学界新聞』(3076号 2014年05月19日)に掲載されています。サイトは以下のとおり。 http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03076_01 アーサー・クラインマン「ケアに影響を…

カールソン賞の受賞

5月21日に、コーネル大学精神医学科で教え、精神医学史研究の礎を築いた歴史家である Eric T. Carlson (1922-1992) を記念した The Carlson Award を受賞いたしました。また、その銘を刻んだ銘板を、コーネル大学の精神医学史研究所の所長である George Maka…

The Carlson Award

I had the honour of receiving the Carlson Award in the memory of Dr Eric T. Carlson (1922-1992), who taught at Department of Psychiatry of Cornell University Medical College and established the basis of the research of history of psychiatr…

二つの美術史映画

帰りの機内映画は美術史関係のものを二つ観ることになった。ひとつは The Monuments Men (邦題『ミケランジェロ・プロジェクト』)。ナチスによるヨーロッパの美術作品の略奪と戦ってそれを取り戻す、勇気あるアメリカなどの美術史研究者たちの英雄的な行為…

科学史・医学史ワークショップ(東大駒場・慶應三田・京都立命館)

6月22日―28日に、東大駒場、慶應三田、京都の立命館の3か所で、イギリスから招聘したロジャー・クーター先生と日本の科学史・医学史の研究者を交えたワークショップが開催されます。このワークショップを組織した高林陽展先生からのご連絡です。拡散をお願い…

差別と隔離と自己解放の物語としての『アナと雪の女王』

飛行機の映画で『アナと雪の女王』を観た。ディスニーのアニメらしい良い映画で普通に楽しんだ。原作はアンデルセンの『雪の女王』で、そこからかなりの改変があるが、雪の女王をどう描くかという違いが特に面白く、また重要である。アンデルセンの作品では…

中世イスラム世界のハンセン病

Dols, Michael W., “The Leper in Medieval Islamic Society”, Speculum, vol.58, no.4 (1983), 891-916. 中世イスラム世界のハンセン病について、この論文は読んでおかなければならないから読み始めたのだが、やはりこの著者だけあってとても面白かった。患…

1960年代の看護人向け教科書の中の精神医療史

吉岡真二・岡田靖雄編『新しい精神科看護』江副勉監修(東京:日本看護協会出版部、1964) 吉岡と岡田は、日本の精神医学史研究に最も大きな影響を与えた二人の精神科医である。特に、岡田は、現代も活躍を続けて高水準の精神医学史の仕事を発表しており、そ…

「閉じ込め症候群」の国際研究:日本の研究者を探しています!

ヨーロッパ在住の研究者が、「閉じ込め症候群」(運動ニューロンの両側障害により顔面や四肢が麻痺し発語不能となる症候群;locked-in-syndrome, LIS)の国際研究の中で、日本サイドを担当できる研究者を探しています。 これはLISの患者を対象にした、医療社会…

精神病患者の絵画

安永浩・徳田良仁・栗原雅直「精神分裂病患者の絵画についての一考察」内村教授還暦退職記念会『内村祐之教授還暦記念論文集』(1959), 553-565. 1958年に『精神神経学雑誌』に掲載された論文で、東大精神科の教授であった内村祐之の退職記念の論文集に掲載…

精神分析風人生相談(昭和10年)

大槻憲二『精神分析 社会円満生活法』(東京:人生創造社、1935) 大槻憲二(1891-1977)は、日本に最初に精神分析を紹介・導入した人物であり、大槻が『人生創造』なる、石丸梧平(1886-1969)が編集した雑誌に連載したものをまとめた書物である。フロイトの…

便利な医学史年表

三木栄『体系・世界医学史』(1972; 東京:日本図書センター、2014) 三木栄は朝鮮の医学史の基本的なレファレンスである『朝鮮医学史及疾病史』を著した偉大な医学史家である。医師であると同時に、歴史的な事実をこつこつと集積して一流のレファレンスをつ…

16世紀トルコの精神病院

Peloso, Paolo F., “Hospital Care of Madness in the Turk Sixteenth Century Accroding to the Witness of G.A. Menavio from Genoa”, History of Psychiatry, 9(1998), 35-38. 16世紀初頭にコンスタンティノープルの精神病院の様子をヨーロッパ人が記述し…

ラインベルガー先生ワークショップ(5月3日―4日) 

“Science and Society” Workshop (No. 1) in Hayama. May 3 and 4, 2014 Observational and Experimental Objects: Science Studies of Materials and Instruments in the Laboratory and the Field In the past decades, experimental and observational as…

ラインベルガー先生講演会「遺伝子と遺伝学・過去と現在」

ハンス=ヨルク・ラインベルガー先生講演会 "Genes and Genetics, Past and Present" 5月9日(金)18.30-20.00 慶應義塾大学 三田キャンパス 南校舎7階475教室 ラインベルガー先生は、マックス・プランク科学史研究所(ベルリン)の所長をつとめ、生命科学の…

優生保護法と精神疾患・「精神薄弱」の不妊手術

Matsunaga Ei, “Birth Control Policy in Japan: A Review from Eugenic Standpoint”, Japanese Journal of Human Genetics, vol.13, no.3; 189-200, 1968. 1955年から1967年の優生保護法の適用例のデータを使って、戦後日本にとっての優生学の意義を探ると…

「徴用神経症」(1944)

安河内律「徴用神経症(仮称)に就て 『ゲシタルト』全体論的成因の考察」『実地医家と臨床』21巻1号(1944), 8-10. アジア太平洋戦争期において、兵士においては戦時神経症が発生し、その治療と対策が大きな問題になったことは、古くは清水寛の研究、新し…