Entries from 2014-01-01 to 1 month

黒死病/ペスト流行の心理的なインパクトを宗教画から読む

Marshall, Louise, “Manipulating the Sacred: Image and Plague in Renaissance Italy”, Renaissance Quarterly, 47(1994), 485-532. 黒死病・ペストが後期中世と初期近代のヨーロッパにどのような心理的なインパクトを与えたのかを宗教画の分析から読み取…

ハンセン病と「音の歴史」メモ

歴史学が視覚の情報に一極的に依存してきたという批判はその通りである。文字をはじめ、歴史学者が使う資料は圧倒的に視覚によるものである。他の感覚も必要であり、研究があちこちで進んでいる。それらを読んでみると楽しい。音、嗅覚、触覚と医学史という…

幸田露伴「将棋雑考」

幸田露伴は博覧強記が似合う人物で、露伴全集の「考証」はどれを読んでも面白い。たぶん有名な作品だろうが、第19巻に収録された「将棋雑考」を初めて読んだところ、記憶に残る傑作だった。西洋将棋・中国将棋・日本将棋について、さまざまな文献からそれぞ…

エミール・マール『ヨーロッパのキリスト教美術』

エミール・マール『ヨーロッパのキリスト教美術 : 12世紀から18世紀まで』上・下巻、柳宗玄・荒木成子訳(東京:岩波書店, 1995) フランスの偉大な美術史家のエミール・マールが、19世紀末から1930年代にかけて執筆した4冊の書物をもとにして、そこから精髄…

『きつねのライネケ』

ゲーテ『きつねのライネケ』上田真而子編訳・小野かおる画(東京:岩波書店、2007) 中世の狐物語にヒントを得て、ゲーテが1793年に書いた叙事詩である『ライネケ狐』を、日本の子供向けに手を入れた編訳した作品。 原作も忠実な作品も読んでいないが、この…

大学院セミナー:症例誌を読む

大学院セミナーのご案内。精神医療の症例誌を読むセミナーです。3月13日・14日の朝10時から、場所は慶應日吉の来往舎・鈴木晃仁研究室(609号)になります。 症例誌 (case records) は、医者・看護者が診療を記録したものです。診療した患者のすべてについて…

医学史の過去・現在・未来(00a) ―序論「医学史」とは何か

序論―「医学史」とは何か 説明的な序論を書きました。皆様のコメントが非常に参考になった部分です。 序論―「医学史」とは何か 「医」とそれにまつわる人物・学問・実践・現象の歴史を研究する「医の歴史」は世界各地においてきわめて長い歴史を持ち、20世紀…

人類学セミナー(英語)―加害者の逆説(慶應三田・1月25日)

心理学的人類学セミナー ラトガース大学、虐殺・紛争解決・人権研究センター所長 A.ヒントン先生を囲んで Research seminar on psychological anthropology and the issue on logic and sensibility 加害者の逆説―人類学的接近(暴力の人類学、道徳性の人類…

フロイト「処女性のタブー」

ジークムント・フロイト「処女性のタブー」本間直樹訳『フロイト全集 16:1916-19年 処女性のタブー 子供がぶたれる』(東京:岩波書店、2010)71-91頁。 フロイト自身はフィールドワークで「未開人」を観察したことは一度もないが、人類学的・民俗学的な主…

アーサー・ クラインマン教授講演会(3/18)

アーサー・ クラインマン教授講演会 演題「ケア をすることについて:ケアに影響をおよぼす文化的要素(On Caregiving: Cultural Factors Affecting Caregiving)」 講師:アー サー・クラインマン(Arthur Kleinman)(ハーバード大学・アジアセンター所長…

Healthy Living in Late Renaissance Italy (2013) -- Book review?

Medical History has received a review copy of Sandra Cavallo and Tessa Storey eds., Healthy Living in Late Renaissance Italy (2013). A beautifully illustrated book on the health practices in Italy. Any volunteer for reviewing this book? Fo…

Late Middle English Remedy-book (Book Review)

Medical History received a review copy of Late Middle English Remedy-book. A scholarly edition of a hitherto unedited remady book based on ancient medicine. Any volunteer for review? The present edition offers the diplomatic transcription …

Review a biography of Flaubert's father?

Medical History has received a review copy of Geoffrey Wall, The Enlightened Physician: Achille-Cleophas Flaubert, 178401846 (2013). Yes, a biography of the father of the author of Madame Bovary! Does anyone want to write a review, a regul…

History of Geology and Medicine (Book Review)

Medical History has received a copy of History of Geology and Medicine edited by C.J. Duffin, R.T.J. Moody and C. Garden-Thorpe and published by The Geological Society. Any volunteer for review or recommendations? The historical links betw…

Carl J. Pfeiffer's Art and Practice of Western Medicine in the Early Nineteenth Century

Medical History has received a paperback reissue of Carl J. Pfeiffer's Art and Practice of Western Medicine in the Early Nineteenth Century. Reviewing this book will give an interesting perspective of looking back the history of medicine a…

「医学史の過去・現在・未来」01b 医学史の過去―古代ローマから1980年代まで

「医学史の過去・現在・未来」 の過去の部分です。以前にアップした分を大きく改訂して、感じでいうと8割ほど完成させましたが、まだ草稿段階です。引用しないでください。 コメントを頂ければ幸いです。 医学史の過去―古代ローマから1980年代まで 過去の医…

「医学史の過去・現在・未来」(草稿05a) 医学史の未来―広さ・深さ・まとまり

「医学史の過去・現在・未来」という文章の最後の部分、「医学史の未来」を論じる部分です。文章の性格上、アジビラに近い性質を持たざるを得ない箇所です。とても書くのが難しく感じました。引用はまだしないでください。 コメントやご意見がありましたらよ…

精神病院の患者写真

ベスレム病院は1247年にロンドンに設立された精神病院で、現存する精神病院の中では最古の設立である。精神医学史の博物館・資料館としての活動も活発で、興味深いブログを運営している。その中で患者の写真について一連のブログがあったのでメモと資料作成…

「生的採掘―バイオプロスペクト」

Markku Hokkanen, “Imperial Networks, Colonial Bioprospecting and Burroughs Wellcome & Co.: The Case of Strophanthus Kombe from Malawi (1859–1915)”, Soc Hist Med (2012) 25 (3): 589-607. バイオプロスペクト―生的採掘の概念を用いた論文をきちん…

科学とファンディングの境界で働く「基礎研究」という概念

Jane Calvert, “What’s Special about Basic Research?”, Science, Technology, & Human Values, vol.31, no.2 (March 2006), 199-220. 科学社会学者による「基礎研究」の概念の分析。現在のアメリカ・イギリスの物理学者と生命系の科学者(24人)と、科学政…

再訪「治療革命」―Jeremy Greene 講演会・ 慶應三田・1月17日5時

2013年度 医療・文化・社会研究会 例会Medicine, Culture and Society Seminar Series日時:1月17日(金)17:00~19:00Date: 17:00-19:00, 17 Jan 2014, Friday場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎473教室Venue: Room 473, South Building, Mita C…

Review Cox & Marland, Migration, Health and Ethnicity?

Medical History has received Catherine Cox and Hilary Marland eds., Migration, Health and Ethnicity in the Modern World ((2013). Anybody wants to review this book? This volume examines the relationship between migration, health and illness…

レナード・ダーウィン『優生學とは何か』(1937)

レナード・ダーウィン『優生學とは何か』齋藤茂三郎訳(東京: 雄山閣, 1937) レナード・ダーウィン(Leonard Darwin, 1850-1943)は、進化論の博物学者で著名なチャールズ・ダーウィンと妻エマの間8番目の子供・4番目の息子として生れた。軍隊での技術系のキ…

精神医学と優生学・1950年の中部地方の山村

岸本鎌一・広瀬伸男・中村[漢字不明]「精神病の集団遺伝に関する研究(第4報)」『環境医学研究所年報』7巻(1956), 118-123. 名古屋市立大学・医学部の精神科の教授で精神病の遺伝の調査を行った教授が岸本鎌一である。大学のHPによれば、「在任中、ロックフェ…

「ポスポル」という明治の「御しやすい火」

横山泰子『江戸東京の怪談文化の成立と変遷 : 一九世紀を中心に』(東京:風間書房, 1997) 明治維新の文明開化期において、西欧の学問、特に科学に基づいて民衆宗教・迷信は錯誤であると唱えることが、文明の一つの「型」として確立した。慶應義塾の小幡篤…

『黒死館殺人事件』とリボーの記憶障碍論

『黒死館殺人事件』は1934年(昭和9年)に小栗虫太郎が『新青年』に発表された探偵小説で、その衒学趣味のために伝説的な奇書である。衒学趣味は文学・歴史・オカルティズム・占星術など広い範囲に及ぶが、科学技術と医学、特に精神医学も重要な領域である。…

人種を超えて・実業家の相貌学

シュネーの『「満州国」見聞記』に人種を超えた階級の相貌論をどんぴしゃで書いている部分があったのでメモ。20世紀には帝国主義と人種主義の時代であるから、人種によって相貌が違うという議論が多かったし、人種主義の科学者は、白人を頂点にして、黄色人…

「医学史の過去・現在・未来」(04a)

「医学史の過去・現在・未来」の草稿です。 1990年代からの日本における医学史研究は、人文・社会科学のそれぞれの分野・領域の多様な視点・問題関心・方法論を用いた研究が併存する形となった。このような多様化は、欧米における医学史研究の発展と類似して…

三島由紀夫『わが友ヒットラー』

ふと思いついて『わが友ヒットラー』を読んだ。だいぶ以前に読んで、たぶん二回目だと思う。もともとあまり演劇を観るほうではないが、死ぬ前に一度は観たいお芝居はたくさんあり、この作品はその一つである。1968年に上演。ラシーヌの『ブリタニキュス』を…

医学史研究の過去・現在・未来―草稿(03a)

『科学史研究』に寄稿する「医学史研究の過去・現在・未来」の部分的な草稿です。まだ不完全な草稿ですので引用はお避け下さい。注の中で必携の英語文献を並べて説明する部分があります。この部分は『科学史研究』の読者にとってどの程度必要なのか、まだ判…