Entries from 2007-07-01 to 1 month

しばらくお休みをいただきます

しばらく、おやすみをいただきます

幸田露伴『一国の首都』

必要があって、幸田露伴が明治32年(1899年)に書いた東京論を読む。大岡信の解説がついている岩波文庫の『一国の首都』。この解説もそうだが、最近の岩波文庫の解説は、古典端正な学問的・書誌的な情報が足りないものが多くなったような気がする。まあ、そ…

栃木のコレラ

明治コレラの民衆史の論文読みが続く。文献は、大嶽浩良「栃木県におけるコレラ騒動」『宗教・民族・伝統-社会の歴史的構造と変容』地方史研究協議会編(東京:雄山閣、1995)、247-269.明治12年のコレラ大流行は栃木県にも波及して患者784人の被害を出した…

コレラと養生

必要があって江戸から明治にかけての日本の民衆史の古典を読む。文献は、安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』(東京:平凡社ライブラリー、1999) 今日は少し研究の話をする。 非西洋諸国の医学に近代化についての論文集への寄稿の依頼があって、日本の医療…

植民地時代朝鮮のコレラ

植民地時代の朝鮮における日本政府によるコレラ対策の論文を読む。文献は、Yunjae, Park, “Anti-Cholera Measures by the Japanese colonial Government and the Reaction of Koreans in the Early 1920s”, The Review of Korean Studies, 8(2005), 169-186.…

ハリー・ポッターと死の秘宝

ハリー・ポッターの最終巻の結末だけ読む。文献は、J.K. Rowling, Harry Potter and the Deathly Hallows (London: Bloomsbury, 2007). 土曜日から日曜日にかけての世界中のブログは、ハリー・ポッターの最終巻についての記事で埋め尽くされただろう。本を予…

ニューヨークのブタ

アメリカの公衆衛生の歴史のスタンダード・レファレンスに目を通す。文献はDuffy, John, The Sanitarians: a History of American Public Health (Urbana: University of Illinois Press, 1990). アメリカの公衆衛生の歴史の大事なポイントを時代ごとに説明…

コレラ除け狂歌

明治12年のコレラの大流行のときに読まれた「衛生狂歌」というのか、衛生の教えを読み込んで5・7・5にしたものを新聞記事で見かけた。(読売新聞、1879/9/13) これを議論の中で、原文の<雰囲気>を伝えながら英語に訳す必要が出てきたので、訳してみた。…

チベットの伝統医学

チベットの伝統医学についての豪華本を読む。文献は The Tibetan Art of Healing, foreword by His Holiness the Dalai Lama, painting by Romio Shrestha, text by Ian A. Baker (London: Thames and Hudson, 1997). テキストはチベットの伝統医学の特徴の…

『レディ・チャタレー』

映画『レディ・チャタレー』を試写会で観る。パスカル・フェラン監督、マリナ・ハンズ、ジャン=ルイ・クロック出演のフランス映画で、今年の秋よりシネマライズでロードショー。 私は初めて知ったのだけれども、D.H. ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』に…

医療警察と公衆衛生

公衆衛生の歴史で過去50年にわたって使われてきた大きな枠組みを再検討する論文を読む。 文献は、Carroll, Patrick E., “Medical Police and the History of Public Health”, Medical History, 48(2002), 461-494. 公衆衛生の歴史の新しい枠組みを模索する作…

コレラ祭りとコレラ一揆

明治期のコレラ流行時の民衆史の研究書を読む。文献は、杉山弘「覚書・文明開化期の疫病(はやりやまい)と民衆意識-明治十年代のコレラ祭とコレラ騒動」『町田市立自由民権資料館』2(1988), 19-50. 明治12年には全国にコレラが流行して、患者が16万人、死…

イギリスのコレラ

1832年のイギリスのコレラの古典的な研究書を読み返す。文献はMorris, R.J., Cholera 1832 (New York: Holmes & Meier Publisher, 1976). コレラの歴史研究の古典。目新しいアイデアや方法論があるわけではないけれども、イギリスの最初のコレラ流行を多くの…

ディーテイルズ No.9 正解

ディーテイルズ? No.9 です。 絵の一部をみて、どの作品か当てるベタなクイズ。 正解は ボッティチェルリの『受胎告知』でした。 処女のまま神の子を宿したと告げられたマリアが激しい動揺を示している(そりゃ、そうでしょう・・・笑)のが印象に残ります。…

コレラの俄踊り

コレラ文献の山の中から、岡山のコレラ流行時の民衆の対応についての論文を読む。文献は、太田健一・永谷美樹恵「文明開化とコレラ騒動―幕末維新期の岡山を中心に」新田義之編『文化のダイナミズム』(東京:大学教育出版、1999) 色々な意味で私が共感する…

コレラ仮面劇

1832年、パリが政治不安とコレラの双方に襲われている時に起きたお祭り騒ぎを描いた一節を持つ小説を読む。文献は、フランスの小説家のウージェーヌ・シュー (Eugène Sue, 1804-57)の『さまよえるユダヤ人』(Le juif errant, 1844-45) で、検索したら、グー…

コレラと尾崎紅葉

必要があって尾崎紅葉の『青葡萄』を読む。明治28年に『読売新聞』に連載された、コレラに題材をとった小説。もっと立派なエディションもあると思うけれど、『明治の文学 第六巻 尾崎紅葉』(東京:筑摩書房、2001) で読んだ。 私生活に題材を取った小説だ…

戦争神経症

必要があって特に戦争神経症についての論考を読む。文献は早尾乕雄「戦場神経症並ニ犯罪ニ就テ」高崎隆治編集・解説『十五年戦争重要文献シリーズ 軍医官の戦場報告意見集』(東京:不二出版、1990)。同書は上海における日本軍兵士による略奪・強姦・傷害・…

精神病院からの手紙

未読山の中から、19世紀フランスのジェンダーと精神医療の言説分析を読む。文献は Matlock, Jann, Scenes of Seduction: Prostitution, Hysteria and Reading Difference in Nineteenth-Century France (New York: Columbia University Press, 1994). 特に第…

疫学の哲学

疫学(epidemiology)の哲学的基礎を論じた論文を読む。文献はCrookshank, F.G., “First Principles: And Epidemiology”, Proceedings of the Royal Society of Medicine, 13(1920), 159-184. 19世紀から20世紀前半は医学の哲学の黄金時代だという印象を持って…

猫とともに去りぬ

出張中の雑駁な読書ノートもこれで終わり。イタリア出張だから、知らないイタリアの作家の本を読んでみようと思って、適当に選んだ本を読む。ジャンニ・ロターリ『猫とともに去りぬ』関口英子訳(光文社:古典新訳文庫、2006) 寡聞にしてロターリという作家…

『イタリア古寺巡礼』

出張中の雑駁な読書の記事が続きます。岩波文庫の和辻哲郎『イタリア古寺巡礼』を読み返す。 和辻が1927年にイタリアを訪れた時の旅行記。有名な街の観光名所、有名な建築や美術作品などを批評し、汽車の窓から広がる光景や植生を観察して有名な『風土』のア…

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』

先日記事にした地下世界の文化史の研究書で、幾つかの村上春樹の作品が触れられていた。その研究書の著者が非常に「できる」学者で、とても読みたくなるような書き方で『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』について論じていた。読みたくなった…

世界最古の植物園

今日は無駄話を少し。 学会の間の空いた時間を利用して、パドヴァの世界最古の植物園に行く。 植物園の詳しいHPはこちら。http://www.ortobotanico.unipd.it/eng/index.htm 世界遺産にも登録されている Orto Botanico は、1545年にパドヴァ大学医学部の植物…

日本文化の空間論

必要があって日本の空間の現象学的文化論のようなものを読む。文献は、オギュスタン・ベルク『空間の日本文化』宮原信訳(東京:ちくま学芸文庫、1994) フランス人による日本文化研究書である本書は、理論的に洗練されていると同時に、読んで楽しい本でもあ…

色彩論

訳書を頂いた。ひょんな事情で一緒に仕事をさせていただいたことがある訳者で、その時以来のファンだから喜んで最初の二章を読む。文献は、デイヴィッド・バチェラー『クロモフォビア-色彩をめぐる思索と冒険』田中祐介訳(東京:青土社、2007)。 主な主題…

帰ってきました!

イタリアのパドヴァで開かれた学会への出張から帰ってきました。 明日から更新を再開します。 お休み中に訪問&コメントくださった方、どうもありがとうございました。