Entries from 2009-01-01 to 1 month

おわび

この二週間ほど、更新が乱れ、記事の質が落ちることが多々ありました。 楽しみに訪問してくださった方々におわびいたします。 明日から、普通のペースで記事をアップできると思います。 といっても、さして質が上がるわけではないのかもしれませんが(笑)

なぜ「歴史」なのか

必要があって、「なぜ歴史を学ぶのか・教えるのか」論じた最近のエッセイを読む。文献は、Cannadine, David, Making History Now and Then: Discoveries, Controversies and Explorations (Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2008). 著者のキャナダインは、…

薬理学入門(50年前)

今から50年前の薬学入門の教科書を読む。文献は、Lewis, J.J., An Introduction to Pharmacology (Edinburgh: E. & S. Livingstone, 1960).医学史研究者としての基礎体力をつけるためと称して、古い医学書で、あまり関係ない分野の本を時々読んでみることに…

アビ・ヴァールブルク『異教的ルネサンス』

必要があって、美術史家アビ・ヴァールブルクの論文集『異教的ルネサンス』所収の「ルターの時代の言葉と図像に見る異教的=古代的予言」を読む。進藤英樹訳でちくま学芸文庫から出ている。アビ・ヴァールブルク(1866-1929)は有名な美術史家だけれども、彼の…

イギリスの検疫の歴史

必要があって、イギリスの検疫の歴史の大著を読む。文献は、Booker, John, Maritime Quarantine: the British Experience, c.1650-1900 (Aldershot: Ashgate, 2007). 620ページもある分厚い本。前半の章しかまだ読んでいないけれども、イギリスの検疫の歴史…

『パリの秘密』

ユージェーヌ・シュー『パリの秘密』を読む。この19世紀のフランス小説の昭和32年に出た古い翻訳を、図書館相互貸借までして借りて読んだのは、19世紀のパリの病院を舞台にした場面で、当事の医学を正面切った批判した記述があるからである。結局、日本語訳…

『新明解古語辞典』

古語辞典を買う。金田一京助監修の『新明解古語辞典』の第三版。ごめんなさい、今日も無駄話です。新しい辞書や辞典を買って最初に手にとって開いてみて、「この辞典の使い方」を読んでみたり、いくつかのエントリーを読んでみたりして、その一冊の書物の中…

「未曾有」と「みぞうゆう」

今日は無駄話。しばらく前に麻生首相が漢字の読み間違いをしたことが話題になった。「踏襲」を「ふしゅう」とか、「未曾有」を「みぞうゆう」とか、まあ普通に読める漢字で、マスコミや野党の議員やネット上で嘲弄された。おそらく本人が一番恥ずかしかった…

『ブーリン家の姉妹』

現実逃避をして、映画『ブーリン家の姉妹』を観る。イングランド国王のヘンリー八世に愛された二人の姉妹を描いた映画。ヘンリーの離婚と宗教改革の原因となったお姉さんのアンを『スター・ウォーズ』のお姫様のナタリー・ポートマンが演じ、ヘンリーはエリ…

サモアのモーツァルトと進化論生物学

必要があって、19世紀末のドイツの医者で進化論生物学者であるヴァイスマンの著作を読む。文献は、Weismann, August, Essays upon Heredity and Kindred Biological Problems, 2 vols (Oxford: Clarendon Press, 1892). Kessinger Reprints から便利なリプリ…

『恋の形而上学』

必要があって、16世紀にプラトンの著作のラテン語訳を刊行したマルシーリオ・フィチーノの『饗宴』注釈を読む。文献は、マルシーリオ・フィチーノ『恋の形而上学-フィレンツェの人マリシーリオ・フィチーノによるプラトン「饗宴」注釈』左近司祥子訳(東京…

古代日本の水銀産業

必要があって、古代日本の水銀産業についての書物を読む。文献は、松田壽男『古代の朱』(東京:ちくま学芸文庫、2005)古代日本には、あちこちに水銀の産地があった。水銀とイオウの化合物は朱砂・辰砂・丹砂などと呼ばれ、しばしば地中から赤く露出してい…

ヨーロッパのパラケルスス主義

必要があって、何度も読んだトレヴァー=ローパーのパラケルスス主義論をもう一度読み直す。文献は、Trevor-Roper, Hugh, “The Paracelsian Movement”, in Renaissance Essays (London: Secker & Warburg,1985), 149-199. しばらく前に物故したオクスフォー…

イギリスのパラケルスス主義

必要があって、イギリスのパラケルスス主義についての論文を読む。文献は、Webster, Charles, “Alchemical and Paracelsian Medicine”, in Charles Webster ed., Health, Medicine and Mortality in the Sixteenth Century (Cambridge: Cambridge University…

環境の健康・人間の健康

必要があって、環境史と医学史を結び付けた論文を読む。文献は、Mitman, Gregg, “In Search of Health: Landscape and Disease in American Environmental History”, Environmental History, 10(2005), 184-210.20世紀前半の医学と環境思想の関係についての…

進化論的歴史

必要があって、進化論の発想を取り込んだ歴史学を提唱したエッセイを読む。文献は、Russell, Edmund, “Evolutionary History: Prospectus for a New Field”, Environmental History, 8(2003), 204-228.人文社会系の学者の多くが進化論を警戒している。一つは…

環境史の意義

必要があって、環境史の本質的な意義をコンパクトに論じたエッセイを読む。文献は、Nash, Linda, “The Agency of Nature or the Nature of Agency”, Environmental History, 10(2005), 67-69. 環境史を位置づけるときに、私が漠然と陥っていた思い込みがあっ…

『緑の列島』

必要があって、日本の森林史/環境史の古典を読む。文献は、Totman, Conrad, The Green Archipelago: Forestry in Preindustrial Japan (Berkeley: University of California Press, 1989). これは『日本人はどのように森を作ってきたのか』というタイトルで…

ペトラルカ『わが秘密』

必要があって―いつもの必要とは少し違った意味の必要だけれども―ペトラルカ『わが秘密』を読みなおす。近藤恒一訳で岩波文庫から。最近、ペトラルカの翻訳が手軽に入手できるようになって、とても嬉しい。詩人ペトラルカが、40歳の頃に今の言葉でいう「中年…

200年前の乳がん手術

必要があって、イギリスの小説家、ファニー・バーニーの乳がん手術についての研究書を読む。文献は、Epstein, Juia, The Iron Pen: Frances Burney and the Politics of Women’s Writing (Bristol: Bristol Classical Press, 1989).ファニー・バーニー (Fran…

『仰臥漫録』

必要があって、同じく正岡子規の『仰臥漫録』を読み返す。阿部昭の解説で岩波文庫のものが出ている。岩波文庫しか見ていないので、詳しいことは分からないけれども、『仰臥漫録』は、『病床六尺』や『墨汁一滴』と性格が違うテキストである。この三者はほぼ…

『病床六尺』

必要があって、正岡子規『病床六尺』を読み直す。上田三四二の解説で岩波文庫から出ているものだけど、きちんと注釈がついているもので読みたいなと思うようになった。子規の短い生涯の晩年は、結核と脊椎カリエスとの闘いであった。その時期に病床随筆の形…

レベッカ・ブラウン『体の贈り物』

必要があって、レベッカ・ブラウン『体の贈り物』を読む。柴田元幸訳で新潮文庫から出ている。翻訳者の柴田元幸が「あとがき」で的確に書いているが、この書物は、エイズ患者を世話する女性のホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちの交流をめぐ…

ロンドンの薬種商

16・17世紀のロンドンの薬種商についての論文を読む。文献は、Wallis, Patrick, “Apothecaries and the Consumption and Retailing of Medicines in Early Modern England”, in Louise Hill Curth ed., From Physick to Pharmacology: Five Hundred Years of …

自然魔術・ヘルメス主義・オカルト主義

必要があって、16・17世紀の自然魔術についての論文を読み直す。 文献は、Copenhaver, Brian P., “Natural Magic, Hermeticism and Occultism in Early Modern Science”, in Reappraisals of the Scientific Revolution, eds. by David C. Lindberg and Rober…

『健康格差社会』

未読山の中から、社会疫学の入門書を読む。文献は、近藤克則『健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか』(東京:医学書院、2005)健康の社会的決定要因を重視して、新しい公衆衛生には、個人とそれを取り巻く生物学的な要因に働きかけるだけでなく、格差の縮小…

中条ふみ子

必要があって、渡辺淳一『冬の花火』を読む。角川文庫から出ている。中条ふみ子は歌人で、1922年に帯広で生まれ、54年に乳がんで没している。乳がんの治療で最初は左の、次に右の乳房も切除された。その経験を含めて、彼女自身の大胆な愛を歌った、『乳房喪…

シェイクスピアのロンドンの占星術医

必要があって、16-17世紀のロンドンで繁盛していた医者、サイモン・フォアマンの研究書を読む。文献は、Traister, Barbara Howard, The Notorious Astrological Physician of London: Works and Days of Simon Forman (Chicago: University of Chicago Pres…