Entries from 2011-04-01 to 1 month

精神病院と都市計画

未読山の中から、精神病院が都市のどこに配されたかを論じた論文を読む。文献は、古山周太郎「都市的施設としての精神病院の成立に関する研究-明治・大正期の精神病院論にみる配置・立地論に着目してー」『都市計画論文集』38,3(2010), 841-846. 精神医学者…

医学史の分類

未読山の中から、近代医学の発展を記述した医学史研究を、社会学の理論に照らして分類するという不思議な研究を読んだ。Coller, Fran M., “Max Weber, Historiography, Medical Knowledge, and the Formation of Medicine”, Electronic Journal of Sociology…

音楽と錬金術

必要があって、音楽と錬金術についての論文を読む。 文献は、Gouk, Penelope, “Harmony, Health, and Healing: Music’s Role in Early Modern Paracelsian Thought”, in Margaret Pelling and Scott Mandelbrote eds., The Practice of Reform in Health, Me…

ホイジンガ『中世の秋』

必要があって、ホイジンガ『中世の秋』を読む。中世という時代、特に14.15世紀のとらえ方について。近代文化の萌芽を中世にさがし求よう、すべてが近づく完成を目指していた時代であると捉える考え方は近年勢いを得ている。しかし、歴史においても、自然にお…

トランスセクシュアリティの歴史

必要があって、20世紀のアメリカにおけるトランスセクシュアリティの歴史をまとめた書物を読む。文献は、Meyerowitz, Joanne, How Sex Changed: a History of Transsexualism in the United States (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 2002).自分…

文化上のシステムとしての常識

インスピレーションを求めて、クリフォード・ギアーツを読む。文献はGeertz, Clifford, “Common Sense as a Cultural System”, in Clifford Geertz, Local Knowledge: Further Essays in Interpretive Anthropology, 3rd ed. (New York: Basic Books, 2000),…

中世ヨーロッパの犬頭人

必要があって、中世ヨーロッパの「怪物」についての記述を読む。文献は、Bartlett, Robert, The Natural and the Supernatural in the Middle Ages (Cambridge: Cambridge University Press, 2008).生きている存在は、肉体におおわれていないもの(天使と悪…

民族衛生学

必要があって、民族衛生学の文献を読む。 文献は、古屋芳雄『優生学原理と人類遺伝学』(東京:雄山閣、1931) 1927年以来、千葉医科大学で社会衛生学講座の中で行っていた。当時、民族衛生学を教えていたのはここだけであった。 民族衛生学は、優性遺伝学と…

安政江戸地震

必要があって、安政江戸地震の有名な刊行物である、仮名垣魯文の『安政見聞誌』を分析した論文を読む。文献は、Koehn, Stephan, “Between Fiction and Non-Fiction – Documentary Literature in Late Edo Period”, in Susanna Formanek and SeppLinhart eds.…

ヨーロッパのレプラ検査

中世・近世のヨーロッパでは、ある患者がレプラと診断されると、市街の外への追放や法的権利の剥奪など、その個人の社会における立地を全く変える処置が行われた。一方で、レプラ患者はキリスト教の慈善の対象として、教会や市当局、そして個人の慈善の焦点…

精神病者監護法以前

必要があって精神病者監護法以前の精神病者の管理の体制を研究した論文を読む。文献は、永井順子「<名指し>のアポリアと<監視>の発生―明治33年<精神病者監護法>の成立をめぐって―」『ソシオサイエンス』9(2003), 181-197.障害は、個体の生における事実…

「夜鳴く鳥」

必要があって、山田慶兒「夜鳴く鳥」を読む。もともとは1985年の『思想』に掲載された論文である。当時の人文社会科学で流行していた、象徴や記号論を使う手法で古代中国医学の呪術療法を読み解いた論文である。その学識、論理、想像力において、一つの決定…

近世ヨーロッパのハンセン病患者の検査

近世のヨーロッパにおけるハンセン病患者、それも収容所に閉じ込められていない患者の取り扱いを描いた有名なニュレンベルクの「レプラ検査」という刷りものがある。これを丁寧に論じた個所を抜書きした。文献は、Demaitre, Luke, Leprosy in Premodern Medi…

丘浅次郎の進化論と政治思想

必要があって、丘浅次郎の進化論を政治思想、特に「国体」の思想と関連させて理解する論文を読む。文献は、Sullivan, Gregory, “The Instinctual Nation-State: Non-Darwinian Theories, State Science and Ultra-Nationalism in Oka Asajiro’s Evolution an…

寄生虫予防

必要があって、戦前日本の寄生虫予防についての論説を読む。文献は、木村猛明・横橋五郎「本邦に於ける寄生虫病蔓延の現況と其の予防撲滅策に就て」『日本公衆保健協会雑誌』No.15, no.3, (1939), 113-128.日本には40種ほどの寄生虫が知られており、そのうち…

ジャマイカの死亡率

必要があって、17-18世紀のジャマイカにおける白人(イギリス人)の死亡率を論じた論文を読む。文献は、Burnard, Trevor, “’The Countrie Continues Sicklie’: White Mortality in Jamaica, 1655-1780”, Social History of Medicine, 12(1999), 45-72. 議論…

農村のトラホーム

必要があって、農村のトラホーム調査報告を読む。文献は、加藤金吉「農村の結膜疾患(神奈川県中郡成瀬村健康調査の中結膜疾患に関する統計報告)『日本眼科学会雑誌』vol.43, no.11, 2488-2508.労働科学研究所が委嘱して、東大の眼科のチームが、神奈川県中…

『医事或問』

同じく、日本思想体系『近代科学(下)』から、吉益東洞の論争的・弁護的な著作を読む。古方派は、病は毒によってもたらされ、一方で薬は毒であり、治療とは毒をもって毒を攻めると称して、峻烈な薬(多くは下剤らしい)を用いた。それとともに、患者の生死…

中世ヨーロッパの生と死

必要があって、中世ヨーロッパの生と死をまとめた解説を読む。文献は、Park, Katharine, “Birth and Death”, in Linda Kalof ed., A Cultural History of the Body in the Medieval Age (Oxford: Berg, 2010), 17-38. 短い記述の中に、非常に的確な事例とテ…

吉益東洞『薬徴』

岩波『日本思想大系 近世科学思想(下)』上巻はさまざまな農書で占められている。「日本思想大系」で取り上げる空海や日蓮や本居宣長といった思想の巨人たちと並んで「近世科学思想」という項目ができて、しかもそのうちの一巻を「農書」が占めることになっ…

「非西洋医学」について

必要があって、「非西洋医学」についての面白い考察を読んだ。文献は、Alter, Joseph, “Rethinking the History of Medicine in Asia: Hakim Mohammed Said and the Society for the Promotion of Eastern Medicine”, Journal of Asian Studies, 67(2008), 1…

病院という空間の公的・私的性格

必要があって、明治の病院を論じた論文を読む。文献は、Burns, Susan, "Contemplating Places: The Hospital as Modern Experience in Meiji Japan", in New Directions in the Study of Meiji Japan, edited by Helen Hardacre and Adam L. Kern, 702-718. …

幕末から明治の梅毒

必要があって、幕末から明治にかけての遊女・娼婦の梅毒検査を通じて「身体の歴史」を論じた論文を読む。文献は、Burns, Susan, “Bodies and Borders: Syphilis, Prostitution, and the Nation in Japan, 1860-1890”, US-Japan Women’s Journal 15(1998), 3-…

呉秀三

必要があって、呉秀三の弟子のひとりが記した呉秀三の位置づけを読む。文献は、秋元波留夫「呉秀三の業績―『精神病者私宅監置の実況及其の統計的観察。附、民間療法』を中心として」『精神医学』42(2000), 977-982. 呉秀三が樫田五郎と共著で執筆した「精神…

『ツーリスト』『ノルウェイの森』

飛行機の中で映画『ツーリスト』『ノルウェイの森』を観る。前者は、アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップの二人の大スターが主演していて、わかりやすい筋立てのサスペンスに、有名な観光地でのアクションを組み合わせた、なんというか、こう、機内…

養生訓と老齢者介護

必要があって、貝原益軒『養生訓』と香月牛山『老人必要養草』(正徳6年、日本衛生文庫に再録)を読む。近世の世帯がその中に抱え込んだ多くの医療・公衆衛生の機能には、もちろん老人の介護も含まれていた。年をとったら若い時とは違った養生法が必要だとい…

野村拓『国民の医療史―医学と人権』

必要があって、野村拓『国民の医療史―医学と人権』(東京:三省堂、1977)を参照する。同じ業界の大先輩が書いた書物だけれども、これは言っておかなければならないだろう。これは「質が低い医学史の書物」である。本書は二部構成にわかれていて、前半はヨー…

江戸医学のダイナミズム

岩波の日本思想体系の近世科学思想の古書に月報がはさまっていて、そこに掲載されていた著名な漢方の医学史の先生の矢数道明の文章が記憶に残ったので。文献は、矢数道明「吉益東洞と中神琴渓」(岩波書店 日本思想大系 近世科学思想 下 月報15(1971年8月)…

トマス・モア『ユートピア』

ユートピア人の思想と倫理は快楽に重きをおいた、ストア哲学の影響が強いものである。その中で、人を真に幸福にする快楽と、かえって苦しみと不幸を与える虚妄の快楽が区別される。後者は、放埓無残な情欲の誘惑によるもので、美しい衣装を着たい、愚にもつ…

英語のプレゼンテーション

私の英語のプレゼンは上手ではないけれども、英語で授業をするうえでももう少し上手になりたいし、日本人の学生に指導するコツも知りたいから、マニュアルを二冊買って読んで見た。文献は、1) Mark Powell, Presenting in English: How to Give Successful P…