Entries from 2010-01-01 to 1 year

近現代日本医療史・研究報告会

科研「近現代の日本における医療の構造変化と歴史の重層」2010夏 第一回報告会プログラムを開催します。 この研究会はセミオープンで行います。どなたでも参加できます。参加ご希望の方はご一報ください。於:大阪大学豊中キャンパスhttp://www.osaka-u.ac.j…

日本のコレラ

必要があって、日本のコレラを素材にした思想史・文化史の研究を読む。文献は、Gramlich-Oka, Bettina, “The Body Economic: Japan’s Cholera Epidemic of 1858 in Popular Discourse”, EASTM, 30(2009), 32-73. 「コレラは徳川社会の the body economic の…

バルト『象徴の帝国』

ベルリンの友人にもらったロラン・バルトの 『象徴の帝国』の英訳を新幹線の中でめくっていたら、自分が得意になって日本(東京)の街の特徴だとついさっき彼に説明したことが、だいたいそのままバルトに書いてあった。バルトは学生時代に読んだから、きっと…

『東京―ベルリン ベルリン―東京展』

ベルリンから来た友人にもらったカタログを眺める。2006年にベルリンで開催された『東京―ベルリン ベルリン―東京展』。立派な本なので原題を記すと、BerlinTokyo TokyoBerlin: Die Kunst zweiter Staedte. 19世紀の末のドイツ人の画家によるジャポニズム風の…

バイオパワー

必要があって、フーコー派の社会学者によるバイオパワー論を読む。文献は、Rabinow, Paul and Nikolas Rose, “Biopower Today”, BioSocieties, 1(2006), 195-217. この論文は、ウェブ上で閲覧できます。http://ww.lse.ac.uk/collections/brainSelfSociety/pd…

Dream Anatomy

いただいたカタログを見る。2002年にアメリカの国立医学図書館で開催された、解剖学の歴史についての展覧会のカタログ。文献は、Sappol, Michael, Dream Anatomy (n.p: National Library of Medicine, )解剖学の有名な図譜だけでなく、新しいところからも取…

「健康青森県」の建設

必要があって、戦時期日本の健康政策の研究を読む。文献は、川内淳史「戦時期地域医療の”経験”-『健康青森県』の成立と展開-」浪川健治・河西英通編『地域ネットワークと社会変容』(東京:岩田書店、2008)427-457.戦前から戦中期にかけての日本の医療体…

淋病とクラミジア

必要があって、江戸時代中期の日本の人口停滞の原因が性病、特に淋病とクラミジアだったという論文を読む。文献は、Johnston, William D., “Sexually Transmitted Diseases and Demographic Change in Early Modern Japan”, EASTM, 30(2009), 74-92. 徳川時…

モレルの変質理論への注釈

必要があって、モレルの変質理論への注釈を読む。これは、Edwin Wing というイギリスの精神科医が、モレルの Degeneration を分析して論じた文章が、Medical Circular というイギリスの雑誌に1857年に連載されたという不思議な経緯のテキストである。この Wi…

『入門傷寒論』

バーンズの論文を読んで、七山順道がどういう仕方で『傷寒論』に典拠し改善しようとしたのか想像するために、入門用の『傷寒論』を眺めてみた。南山堂から出ている森由雄著の『入門傷寒論』という書物。これは読んだというより想像しただけだけれども、バー…

江戸の症例集

必要があって、江戸の症例集を分析した論文を読む。文献は、Burns, Susan L., “Nanayama Jundo at Work: a Village Doctor and Medical Knowledge in Nineteenth-Century Japan”, EASTM, 29(2008), 61-82. 幕末に出羽の国の湯沢で開業していた七山順道という…

免疫概念の歴史

必要があって、免疫概念の歴史についての論文を読む。文献は、Silverstein, Arthur and Alexander A. Bialasiewicz, “History of Immunology: a History of Theories of Acquired Immunity”, Cellular Immunology, 51(1980), 151-167.医学者による古典的な医…

近世京都の医療

しばらく前にEASTMという東アジアの科学・技術・医学の歴史のジャーナルが日本の医学の歴史の特集号を組んだので、掲載されている論文を取り寄せた。まずは、ずっと読みたかった京都の山科言経の日記における医療の分析を読んだ。文献は、Goble, Andrew Edmu…

『栄養学史』

必要があって、日本語の栄養学史の書物を読む。文献は、島園順雄『栄養学史』(東京:朝倉書店、1978)。 今日は、書籍のマージナリア(書き込み)についてのちょっとしたリサーチ(笑)と無駄話。栄養学の歴史について、古代オリエントから現代まで人名と科…

DSMの哲学

必要があって、DSMを哲学的に分析した書物を読む。文献は、Cooper, Rachel, Classifying Madness: a Philosophical Examination of the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (Dordrecht: Springer, 2005).科学理論(この場合はDSM)が用…

「山男の四月」と六神丸

宮沢賢治に「山男の四月」という童話がある。家庭薬の「六神丸」が小道具になっている話で、確認することがあって読み返した。山男が草原に仰向けになって空を眺めている。そのうちに樵にばけて街に行って、シナ人の行商人に会う。そのシナ人は長生きの薬だ…

カネッティ『眩暈』

必要があって、エリアス・カネッティ『眩暈』を読む。法政大学出版局から、池内紀の翻訳が出ている。色々な要素がある作品である。知識人の社会における位置、群衆、ミソジニー、障害者、(反)ユダヤ主義があって、それにナチスによって出版禁止にされたと…

モダニズムと病院建築

必要があって、20世紀前半の病院建築についての研究書を読む。文献は、Adams, Annmarie, Medicine by Design: the Architect and the Modern Hospital, 1893-1943 (Minneapolis: University of Minnesota Press, 2008)モントリオールの Royal Victoria Hospi…

円形病棟

必要があって、イギリスの病院建築を論じた書物を読みなおす。文献は、Taylor, Jeremy, The Architect and the Pavilion Hospital: Dialogue and Design Creativity in England 1850-1914 (London: Leicester University Press, 1997). 同じ著者の本で、この…

『イタリアを旅行したイギリス人辞典』

本棚を眺めていて、あまり使わなかったレファレンスが目にとまったから、それについて無駄話。文献は、Ingamells, John, ed. A Dictionary of British and Irish Travellers in Italy 1701-1800 (New Haven: Yale University Press, 1997)18世紀にイギリスの…

『中世の狂気』

必要があって、中世ヨーロッパの狂気についての百科全書的な書物を読む。文献は、ミュリエル・ラアリー『中世の狂気 十一~十三世紀』濱中淑彦監訳(京都:人文書院、2010)。監訳者の濱中は、医学史の世界では、シッパーゲス『中世の医学』『中世の患者』な…

呉秀三

精神病院の患者が長期在院してしまうことについて。 作業療法が、それを短くする可能性について。 呉秀三がとても面白いことを言っている。「また、巣鴨病院なり、その他の病院におきまして、精神病者を病院に入れると、重荷でも下ろしたような感をもってお…

北原糸子『都市と貧困の社会史』

必要があって、明治初期東京の狂人収容についての史実をチェックする。文献は、北原糸子『都市と貧困の社会史-江戸から東京へ―』(東京:吉川弘文館、1995)。狂人ケアを論じたのはごく短い論文だけれども、重要なことを資料に基いて指摘している、ソリッド…

兵頭晶子『精神病の日本近代』

必要があって、近代日本の精神医学の歴史研究の最新作を丁寧に読み直す。文献は、兵頭晶子『精神病の日本近代―憑く心身から病む心身へ』(東京:青弓社、2008)著者は、第一回日本思想史学会奨励賞を受賞した若手のホープの研究者である。民俗学と日本史の二…

『病院の世紀』

必要があって、近代日本の医療の歴史をおおづかみで捉えた著作を読む。文献は、猪飼周平『病院の世紀の理論』(東京:有斐閣、2010)。これから少なくとも10年間か20年間は、日本の医療史を論じるときに必ず参照しなければならない重要な著作である。国際比…

『イギリス文化入門』

いただいたイギリス文化学の教科書に目を通す。文献は、下楠昌哉責任編集『イギリス文化入門』(東京:三修社、2010)近年では、多くの大学の英文科の学生は「英文学」を学ぶというよりも、ビートルズやミニスカートやベッカムについて学んでいる方が多いと…

呉茂一『ギリシア神話』

もうひとつ飛行機の中の映画がらみの話題。飛行機の中で『タイタンの戦い』を観た。特殊効果とかSFXは機内の極小の画面で見ても迫力があるけれども、ストーリーがあまりに貧しい。思想的には、アメリカの田舎の青年が世界の中心に言ってセルフ・ヘルプで成功…

『シャッター・アイランド』

知人に勧められていたこともあって、出張の飛行機の中でマーティン・スコセッシ監督、ディカプリオ主演の映画『シャッター・アイランド』を観る。時代と場所の設定は1950年代、触法精神病患者が収容される孤島の精神病院。そこで女性患者が脱出したという知…

Prospect より - 恋愛短編小説

出張の飛行機の中で、Prospect を読む。イギリスの中道左派系の高級総合誌で、人に説明するときには、政治的には左派のNew Statesman と 保守のSpectator の中間くらいと説明することにしている。昔は英語の新刊小説を読んだりしたけれども、最近は一年に一…

『アリス・イン・ワンダーランド』

数日、無駄話が続きます。出張の飛行機の中で、映画『アリス・イン・ワンダーランド』を観る。二冊の原作のアリス本に出てくるキャラクターを総出演させたもので、ディスニーによるファンタジー+アクション映画だと思えばいいのかもしれない。アリスは19歳…