Entries from 2010-01-01 to 1 year

大正期の犯罪精神病―「殺人狂榊○鹿○郎」

必要があって、大正期に殺人事件を起こし、精神病を理由にして免訴になり、最終的に精神病院の内部で自殺した患者についての詳細な記録を読む。兵頭晶子『精神病の日本近代』が発掘した貴重な事例のひとつである。文献は、山本友香「所謂殺人狂榊○鹿○郎の病…

移民と資本主義と精神病院

必要があって、移民と精神病院の関係を資本主義にからめて実証歴史研究をしようとした論文をチェックする。文献は、Adair, Richard, Joseph Melling and Bill Forsythe, “Migration, Family Structure and Pauper Lunacy in Victorian England: Admissions t…

医療の社会化

必要があって、医療の社会化の力学を論じたすぐれた論文を読みかえす。文献は、高岡裕之「医療問題の社会的成立―第一次世界大戦後の医療と社会―」『歴史科学』No.131(1993), 23-37.明治初期から中期にかけては、従来開業や試験開業のように、徒弟制まがいの…

入江泰吉『私の大和路』

無駄話先日亀井勝一郎の『大和古寺風物詩』をアマゾンで注文したときに、ついでに推薦されて買った書物。入江泰吉という人物は奈良の写真をとる写真家として名前を知っていた程度だったけれども、先日、修学旅行で興福寺の「阿修羅」にやられてしまった娘と…

16世紀イタリアの帝王切開

同じ号に Katharine Park, “The Death of Isabella della Volpe” という、古文書の復刻があったので喜んで読む。16世紀イタリアの帝王切開についての証言である。この時期の帝王切開というのは、もちろん現在の帝王切開と違い、母親の死後に子宮を切開して胎…

ボディワークという概念

必要があって、Mary Fissell の論文を読む。文献は、Bulletin of the History of Medicine, 82(2008), no.1, Special Issue: Women, Health and Healing in Early Modern Europe. のIntroduction この特集号は、近世の女性と医療というテーマで、スペイン、…

家庭における結核対策と個人の誕生

新着雑誌から、20世紀中国における結核対策と個人の誕生を論じた論文を読む。文献は、Lei, Sean Hsiang-Lin, “Habituating Individuality: the Framing of Tuberculosis and Its Material Solutions in Republican China”, Bulletin of the History of Medic…

研究会―老人ホームの臨床人類学と哲学

日時:2010年12月11日(土)17:00-19:00 場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南館5階ディスカッションルーム講演:Annemarie Mol (Professor, Institute for Social Science Research, University of Amsterdam)課題:On eating well. Health, taste and oth…

オリヴィア・ニュートン=ジョン

無駄話ですが、力は入っています(笑)今回の飛行機は映画が『インセプション』に、アンジェリーナ・ジョリー特集、邦画は堺雅人特集で、観たいものが多かったけれども、そのすべてに優先して、オーディオで「オリヴィア・ニュートン=ジョン特集」を聞いた…

中国の拡大と Zhang

新着雑誌から素晴らしい論文を読む。文献は、Yang, Bin, “The Zhang on Chinese Southern Frontiers: Disease Constructions, Environmental Changes and Imperial Colonization”, Bulletin of the History of Medicine, 84(2010), 168-192.中国医学における…

生ワクチンと「死んだ」ワクチン

狂犬病のワクチンについての論文を読む。Chakrabarti, Pratik, “’Living versus Dying”: The Pasteurian Paradigm and Imperial Vaccine Research”, Bulletin of the History of Medicine, 84(2010), 387-423.パストゥールによる狂犬病のワクチンの製作は、…

消化器と精神病

新着雑誌から、ピネルを中心に、精神医学における消化器の役割を論じた論文を読む。文献は、Williams, Elizabeth A., “Stomach and Psyche: Eating, Digestion, and Mental Illness in the Medicine of Philippe Pinel”, Bulletin of the History of Medicin…

ほがらかな景観と精神病院

新着雑誌からもう一つ。19世紀の精神病院の景観についての論文。文献は、Hickman, Clare, “Cheerful Prospects and Tranquil Restoration: the Visual Experience of Landscape as Part of the Therapeutic Regime of the British Asylum, 1800-1860”, Histo…

同性愛に対する治療

新着雑誌より。20世紀エディンバラの精神病院における同性愛者に対する治療について。文献は、Davidson, Roger, “Psychiatry and Homosexuality in Mid-Twentieth Century Edinburgh: the View from Jornanburn Nerve Hospital”, History of Psychiatry, 20(…

ハッキング『マッド・トラヴェラー』

必要があって、科学哲学者のイアン・ハッキングの書物を読む。文献は、Hacking, Ian, Mad Travelers: Reflections on the Reality of Transient Mental Illnesses (Charlottesville: University Press of Virginia, 1997).19世紀末から20世紀初頭にかけて、…

『中世の患者』

必要があって、中世の医療についての概説書を参照する。文献は、ハインリッヒ・シッパーゲス『中世の患者』濱中淑彦監訳(京都:人文書院、1993)解説によると、著者はアラビア医学とヒルデガルト・フォン・ビンゲンについての業績がある碩学で、たしかにヨ…

イギリス人の性行動

必要があって、20世紀末のイギリス人の性的行動についての調査を読む。文献は、Wellings, Kaye, Julia Field, Anne M. Johnson and Jane Wadsworth, Sexual Behaviour in Britain: The National Survey of Sexual Attitudes and Lifestyles (London: Penguin…

亀井勝一郎『大和古寺風物誌』

偶然、亀井勝一郎『大和古寺風物誌』を読んだ。1962年に出た平凡社の『世界教養全集』という全集ものの一冊に、谷崎の『陰翳礼讃』や小林秀雄の『無常ということ』などと一緒に入っている。実は、本当に恥ずかしい話だけれども、奈良が好きな人物であるとい…

研究者の自己啓発書

目についたので、研究者用の自己啓発書を読む。文献は、島岡要『やるべきことが見えてくる―研究者の仕事術 プロフェッショナル根性論』(東京:羊土社、2009) 学者や研究者には自己啓発書やビジネス書のたぐいを毛嫌いしたり軽蔑したりしている人も少なから…

私的生活の歴史

アナール派の社会史の集大成である5巻本の A History of Private Life は、イギリスで暮らしていたときにブッククラブで買って(笑)、5巻揃えて持っている。そのうち20世紀を扱った第5巻の、身体と性を扱った部分を、必要があって読む。オーガズム、セクソ…

長い「性の革命」

必要があって、2世紀間にわたるイギリスの性と避妊の歴史を通じて、「性の革命」を論じた書物を読む。文献は、Cook, Hera, Long Sexual Revolution: English Women, Sex, and Contraception 1800-1975 (Oxford: Oxford University Press, 2004).イギリスの歴…

石田昇『新撰精神病学』

必要があって、石田昇『新撰精神病学』第八版(東京:南江堂、1918)をチェックする。石田は、呉秀三のもとで東大の精神科を出た後、30歳で長崎医学校の教授となった俊英である。当時にしては珍しくアメリカを留学先に選び、ホプキンスのアドルフ・マイヤー…

小南又一郎『捜索用法医学』(京都:カニヤ書店、1926)

京都帝国大学の教授が、警察むけに書いた法医学の書物。警察だけでなく、いわゆる探偵小説ファンに向けて書いたのかもしれない。細かい証拠や血痕から殺人か自殺か決めることができるという話は、「小南の事件簿」に入れていいかも。戦前から戦後の法医学の…

民族差と梅毒性精神病

必要があって、梅毒精神新病の民族差についての論文を読む。文献は、今村新吉「南洋における麻痺性痴呆」『今村新吉論文集』(東京:創造出版、2003)、192-219.今村新吉は京都帝国大学の精神科の教授で、フランスの影響が強い「フランス学派」の精神医学を…

ゴシック・エピデミオロジー

必要があって、黒死病のヒストリオグラフィについての論文を読む。文献は、Getz, Faye Marie, “Black Death and the Silver Lining: Meaning, Continuity, and Revolutionary Change in Histories of Medieval Plague”, Journal of the History of Biology, …

呉秀三の狐憑き論

ついでに、呉秀三が『精神病学集要』に記した狐憑き論を読む。私がもっている創造出版のりプリントでいうと、上巻の104頁から。「狐憑き」と一言でいっても、その内実は多様な現象で、呉は、大きく分けて三つの現象をわけてみる。一つが、狐憑きについての妄…

本能の仮構と新しい精神医学

必要があって、三宅鐄一の精神病学教科書をチェックする。文献は、三宅紘一『精神病学提要』第五版(東京:南江堂、1939)ついでに、第二版(1933)もチェックした。三宅の精神医学の教科書は、まず人間の精神機能を知・情・意の三つにわけて、それぞれの機…

医療法人爽神堂七山病院『爽神堂四百年』

貴重な書籍をいただいた。大阪の方に16世紀からあるお寺が経営する精神病院で、現存する精神病院の中では、日本最古の起源をもつもののひとつである。古い建物の建て替えをしたときに、大量の貴重な史料が出てきて、それらを用いて書いたとのこと。基本、「…

『イギリス文化史』

書物をいただいた。井野瀬久美恵編『イギリス文化史』(京都:昭和堂、2010)イギリス史の研究者の中で、脂が乗り切っている年代の旗手たちがきら星のように並ぶ豪華な執筆陣である。編集の井野瀬先生が信頼されていることの証だろう。イントロでは、長谷川…

満州のペスト

必要があって、満州のペストについての研究を読む。文献は、Gamsa, Mark, “The Epidemic of Pneumonic Plague in Manchuria”, Past and Present, no.190(2006), 147-184.満州のペストについての論文というより、それを素材にして、社会史の反省のうえにたっ…